民事信託Q&A

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民事信託に関するQ&A

  • 信託と遺言の違い

    信託と遺言はどう違うのでしょう

    遺言は、遺言をする本人(遺言者)が、死亡したときに有する財産を、死亡の時に誰に引き継がせるかを決めておくものです。そのため、生前に財産を誰かに引き継ぎたいときには使えません。

    これに対して、信託は、本人が死亡した時だけでなく、生前に財産を渡すことを決めておくことができます。

    また、遺言では、本人の死亡時の財産を死亡時にすべて引き継がせることになるのに対し、信託では毎月一定額ずつ引き継がせることもできます。

    例えば、本人の推定相続人である子どもが浪費家である場合、遺言により一度に大金を相続させるより、信託を使って受託者から毎月一定額を子どもに渡す方が、本人としては安心できると思われます。

    信託では信託設定時に信頼できる受託者を選択できるほか、信託した財産を分別管理する義務があるなど、信託法上、将来の金銭の支払いを確保するための制度も設けられています。

    もう一つ、遺言では、相続人が引き継いだ財産について、その後発生する相続(二次相続)の内容を定めることはできないとするのが一般的です。例えば、本人が離婚して甲さんと再婚し、前配偶者との間に子(乙さん)がいる場合、まず甲さんに自宅不動産を引き継がせたうえで、甲さんが死亡した後は、実子である乙さんに当該自宅不動産を引き継がせるという内容の遺言は有効にはなりません。なぜなら、遺言では本人の死亡時に財産を誰に渡すかということしか決めることができないからです。

    これに対して、信託では、遺言ではできない二次相続に関する取り決めができるので、甲さんが死亡した後は、乙さんが自宅不動産を引き継ぐという内容の信託を作ることができます(「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」といいます)。これは、信託が、本人の死亡後にも有効に継続することができるという性質があるからです。

    このように、信託では、遺言では困難なケースにおいても、本人(被相続人)の意思を反映した形での財産の引き継ぎが可能です。

    信託 遺言
    効力発生の時期 いつでも可能 死亡したとき
    財産を渡す時期 いつでも可能 死亡したとき
    財産の引継ぎ方法 いつ引き継ぐか、一括か分割かなど自由に決められる 死亡した時点ですべて一時に引き継ぐ
    二次相続について 決めることができる 決めることはできない
  • 信託と成年後見の違い

    信託と成年後見はどう違うのでしょう

    「成年後見」は、本人の判断能力が不十分になった場合に、裁判所の監督のもとで、裁判所に選任された人(成年後見人等)が本人のために財産管理及び身上保護を行う制度です。信託は財産管理を行う制度であることから、身上保護が含まれない点が大きな違いです。

    成年後見には、法定後見と任意後見があります。法定後見が本人の判断能力が不十分になってから使われる制度であるのに対し、任意後見は、本人の判断能力が十分なときに任意後見契約をして設定されます(発効するのは本人の判断能力が不十分になってからです)。信託も判断能力がないと設定できないので、この点は信託と任意後見は似ています。

    成年後見は本人の全財産が財産管理の対象となり、後見人が本人の財産に関する管理処分の包括的代理権を持ち、本人の行為について取消権を有します(保佐や補助では、財産管理の対象範囲が異なります)。後見人は財産を安定して被後見人のために使う必要があり、財産をリスクを取って積極的に運用することは一般的には困難です。

    これに対し、信託は、財産を管理する人(受託者)に信頼できる人を選べますし、本人(委託者)が選択した財産、例えば現金・預金は自分で管理するが収益不動産のみを受託者に託すということができます。積極的に運用することを託すことも可能です。また、信託では、裁判所の一般的な監督に服することはなく、本人(委託者)の意思に基づいて監督方法等を決めることができます。

    任意後見では、財産を管理する人や管理対象となる財産などを本人が決めることができる点で信託と似ていますが、本人の判断能力が不十分となり任意後見が開始されると、後見監督人を通じて、裁判所の監督に服することになります。

    終了事由に関しては、成年後見は、被後見人の死亡により終了しますが、信託では、委託者の死後に財産管理を継続することや、いつまで継続するか等についても決めることができます。

    なお、信託はあくまで財産管理の制度であり身上保護が含まれないため、本人の身上保護を行うために、信託と成年後見を併用して利用することが望ましい場合もあります。

    成年後見 信託
    法定後見 任意後見
    制度の特徴 財産管理・身上保護 財産管理
    手続時期 判断能力がなくなってから 判断能力があるとき
    効力発生時期 判断能力がなくなってから いつからでも可能
    対象財産 すべての財産 任意で決めた財産のみ
    監督体制 裁判所の監督に服する 監督者をつけることも、付けないことも可能
    財産の運用 難しい 設定することは可能
  • 確実に子孫に財産を渡すために、信託を使うと

    歴史的価値のある旧家に住んでいるが、息子はその価値がわかっていない。息子がこの家を相続すると、取り壊したり、売ったりしてしまうだろう。私の死後、息子にこの家に住んでもらいたいが、息子の死後は、この家の価値を理解し維持管理に意欲のある孫に引き継いでもらいたい。

    本人が亡くなり家は息子が相続すると、息子は、自由に自身の財産である家を取り壊したり、売ったりすることができます。しかしそのようなことがあると、孫に歴史的価値のある家を引き継いでもらうことはできなくなります。
    信託を使うと、この家を確実に孫に引き継いでもらうことができます。例えば、委託者を本人、受託者を孫であるA、受益者を本人とし、信託財産を「家」とする信託契約を結びます。本人の生存中は、A(受託者)が財産を本人(受益者)のために管理します。(信託財産である家を適切に管理し、本人が居住できるようにします。)こうすることで、本人の生存中は、本人がこの家に住み続けることができます。
    また、この信託契約で、本人死亡後の受益者(第二次受益者)を息子であるBとしておきます。本人死亡後は、A(受託者)は、本人の息子であるB(Aから見て父親。第二次受益者)のために財産を管理します。こうして、Bもこの家に住むことができます。
    そして、この信託契約で、Bの死亡により信託が終了すること、その時点の残余財産をAが取得すると決めておきます。そうすればBは本人死亡後に「家」に居住することはできますが、取り壊したり売却する権限がないため処分される危険がなく、B死亡後に孫(A)に旧家を引き継いでもらうことができます。

  • 親亡きあとに子どもを守るために、信託を使うと(「親なき後問題」)

    精神障害をもった息子(Bさん)を持つAさんは、自分が認知症になったり、死亡した場合にBが生活していけるかどうかが心配です。娘のCさんに後のことをお願いしたいですが、よい方法はないでしょうか。

    高齢の親御さんには、自身が亡くなった後に、残された障害を持った子どものことが心配だという方は多いと思います(一般に「親なき後問題」などといわれます)。
    Aさんの判断能力が低下した場合は、Aさんに後見人を付けて財産管理や身上監護をしてもらうことはできますが、後見人はあくまでもAさんのために後見業務を行うことになります。Bさんには別の後見人を付けることができますが、Bさん自身の財産がないことが問題になる可能性があります。
    また、Aさんが亡くなった後のことについて遺言書を作成して息子のBさんに財産を残すようにしても、Bさんが、財産を自分で適切に管理することができなかったり、誰かに騙されてしまう可能性があります。
    そこで、Aさんが元気なうちから、Aさんを委託者として、信頼できる娘のCさんを受託者として、自宅などのAさんの財産を信託することが考えられます。信託だと、Aさんの存命中はAさんが信託した財産から利益を受けることにし(受益者といいます)、Aさんが死亡したときには、息子のBさんをその財産からの利益を受ける受益者とすることができます。こうすることで、Aさんが認知症になっても、死亡しても、途切れることなく、娘のBさんが、Aさんや、Bさんのために財産を管理することができます。
    また、信託契約では、Aさんが亡くなった後に息子のBさんが施設などに入るためにまとまった費用が必要となる場合は、自宅を売却して入所に必要な費用を捻出する権限を受託者となる娘のCさんに与えるなど柔軟な対応が可能です。
    親なき後の問題については、このように信託の仕組みを利用することが可能です。

  • 残されたペットのために、信託を使うと(「ペット信託」)

    高齢のために、自分が亡くなったあとにペットが残されることが心配です。信託を使って対策をとることができますか?

    高齢の方の中には、自身が亡くなった後に、残されたペットがどうなってしまうか心配だという方は多いと思います。
    たとえば遺言書を作成して親族などにペットの世話を頼み、その世話の費用としてある程度まとまったお金を渡すという方法です。ペットの世話が条件になるので、法律用語では「負担付遺贈」と呼ばれます。
    しかしこの方法だと、ペットの世話が負担だという理由で親族に遺贈を断られることがあります。また、ペットの飼育代として渡したお金がペットのために使われずにペットが放置されてしまうという心配も生じます。
    このような場合、ペットの世話をお願いできる仲間と、金銭管理をしてくれる親族などがいれば、親族を受託者としてまとまった金額を信託し、その親族から実際に世話をしてくれるペット仲間に対して、毎月一定の飼育代を払ってもらうようにする信託を利用することが考えられます。
    信託では、さらに、信託監督人という受託者を監督する人を付けて、飼育代がきちんと支給されているかを受託者から報告を受けることで、金銭がきちんと飼育代として使われているかを確認することも可能です。
    これが「ペット信託」と呼ばれる手法です。

  • 事業承継のために、信託を使うと

    子どもに会社を継いでもらいたいと思っていますが、まだまだ任せられる段階ではありません。しかし私も高齢になってきて、いつ判断能力が衰えるかということも心配です。
    うまく事業を子どもに承継させるために、信託を使うことはできないでしょうか?

    経営者が高齢になると、事業を継続させるために、会社を誰に、どのように承継するかが課題となってきます。子どもに後を継いでほしいけれど、「自分が生きているうちは自分で経営したい」と考える人も多いのではないでしょうか。
    この場合、子どもを「受託者」として、会社株式を「信託財産」として預け、経営者本人は「受益者」となります。すると、株式から得られる配当は受益者が受け取り、株主総会で「議決権を行使する権利」については、委託者が受託者に議決権の行使を指図する権利を持っておくことで、経営者は従前と同じように株式の権利を行使することができます。そのうえで、委託者が認知症になった場合は「議決権を行使する権利」は受託者が行使すると決めておけば、判断能力が衰えた場合に備えることができます。
    また、委託者が死亡した場合に株式を後継者だけに相続させるとほかの子ども達との間で不公平になる場合、信託では、株式が持っている「議決権を行使する権利」と「配当を受ける権利」を、別々に分けることができることを利用して、後継者になる子どもには株式全部について「議決権を行使する権利」を与え、株式の「配当を受ける権利」は複数の子どもに均等に与えることで、経済的な不公平さを解消することも可能です。
    このように信託では株式の権利を分けることができるという特徴を生かした事業承継のプランを立てることができます。

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