現時点では、検索可能な状態で保有する個人情報の数が5000人分未満の団体については、個人情報取扱事業者、つまり個人情報保護法上の諸規定を守らなければならない者から除外するとの規定があります。
5000人分以上の個人情報を検索可能な状態にしている町内会、自治会、同好会はほとんどないと考えられます。そのような団体は、個人の同意なく名簿を作って配付しても、個人情報保護法違反に問われることはありません。
しかしながら、すでに、この限定を削除する旨の法令改正がなされており、平成29年9月9日までに施行されることになっています(具体的な日程は決まっていませんが、平成29年春頃とされています。)。平成29年春頃以降は、件数に限らず個人情報を検索可能な状態にしている者は個人情報取扱事業者となります。
したがって、以降は、町内会、自治会、同好会などが名簿を作成して配付しようとする場合、まずは名簿配付を個人情報の利用目的として定めなければなりません(個人情報保護法15条)。また、会員から個人情報を取得する場合は、あらかじめ名簿を作成して会員に配付するとの利用目的を明示して、同意を得なければなりません(同18条2項、23条1項)。
こうした手続をとらずに取得した個人情報(改正前に利用目的を示さずに提供を受けたものなど)を基に名簿を作成して配付したい場合は、あらためて名簿配付につき同意を得なければなりません。
利用目的の設定や、会員から同意を得る際の文面の作成等の詳細は、弁護士にご相談ください。
境界線の位置を決めるという言葉には、登記上の境界(筆界)を決めるのと、互いの土地の所有権の範囲(所有権界)を決めるという二つの意味が含まれます。
まず、境界確定訴訟という制度があります。この訴訟を提起すれば、裁判所が、筆界のみならず所有権界の位置を定める判断(判決)をします。確定した判決にもとづいて法務局に申請すれば、筆界も確定します。ただし、時間と費用の負担が大きいのが難点です。
次に、所有権登記名義人(共有者の一人でも可)であれば、法務局に申請して、法務局の筆界特定登記官が筆界を特定する筆界特定制度というものもあります。しかし、これは所有権界を定めるものではありませんから、あらためて境界確定訴訟を提起して筆界と異なる所有権界を主張することが可能です。ただし、実際には筆界の特定が事実上所有権界も定めたものとされる場合が多いと思われます。
一方、裁判所に調停を申立て、所有権界の位置の一致をめざすという方法もあります。また、裁判所ではなく、民間型紛争処理機関(ADR)として大阪弁護士会と大阪土地家屋調査士会が設立した『境界問題相談センターおおさか』でも、隣家が応じれば調停を行って、所有権界の位置の一致をめざすことができます。ただし、いずれの調停で境界線の一致をみても、それは筆界を定めるものではないので、筆界を決めるためには、一致した境界線について、あらためて関係当事者の同意を得て登記申請をしなければなりません。
建設作業騒音については、騒音規制法第2条3項や都道府県条例(大阪府は「大阪府生活環境の保全等に関する条例」)で規制をしています。これらの規制に違反すれば違法とされ、行政による改善勧告や改善命令(騒音規制法第15条)や罰則があります。ただし、規制の対象となるのは「特定建設作業」(くい打機、さく岩機、空気圧縮機、バックホウ、トラクターシャベル、ブルドーザーなどを使用する作業)に限られており、すべての建築工事の作業音が問題になるわけではありません。具体的な規制基準は、騒音規制法第15条にもとづき、環境大臣によって「特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準」が定められており、「特定建設作業の場所の敷地の境界線において85デシベルを超える大きさのものでないこと」などと決められています。
「特定建設作業」に該当しない場合や規制基準値に達しない場合でも、その地域の環境基準(環境基本法第16条)の基準値を超えていれば、裁判などで、受忍限度を超えるものと評価されやすくなります。具体的な基準値は、環境基本法第16条2項にもとづき、都道府県が都市計画法の用途地域に応じて決めており、例えば大阪府の場合、住居専用地域(道路に面する地域を除く)なら昼間(午前6時から午後10時まで)55デシベル以下となります。
騒音の場合、まずは、騒音の大きさを測定する必要があります。市町村の担当課に申立てをすれば、測定に来てもらえます。その場合、測定結果を書面で教えてもらうようにしてください。自分で費用を負担して民間の測定業者(資格が決められています)に測定してもらう方法でも可能です。
隣に高いビルやマンションが建築されると、日照や電波が遮られて日照被害や電波障害が発生したり、強いビル風による風害が発生したりすることがあります。
日照を受ける権利(日照権)は、健康で文化的な生活のために必要なものです。建築基準法には、日影になる影響について配慮した規定があります。しかし、この規定は、各自治体が日影規制を適用する地域として指定した地域内に限って適用され、商業地域や工業地域には指定されません。そのため、住居系の用途地域以外では、近隣に大幅な日影を生じる建物を建築可能ですが、建築基準法上は規制されないからといって、実際の日影被害について建物所有者の責任が常に免除されるわけではありません。
風害は、高い建物の影響によって、限られた範囲で、建築前より風量・風速が大きくなる場所ができてしまうことから生じます。風害には、現行法上規制がなく、建物の高さや形態が建築基準法に違反していなければ、現に風害を起こす建物でも建築可能です。事前に建築後の風環境のシミュレーションをする場合もありますが、法的な義務づけはありません。なお、日照被害の場合と同様に、建築基準法上規制されない場合であっても風害が起こった場合の建物所有者の責任が常に免除されるわけではありません。
日影や風によって生じる(または生じる可能性のある)具体的な被害が「受忍限度(日常生活上、がまんできる範囲)」を超える場合には、問題になるマンションの事前建築差止や、建築後の損害賠償請求などが可能です。この「受忍限度」は、被害の程度、地域の状況、被害結果回避の可能性、加害側建築物の用途、行政上の規制との適合性、交渉の経緯などの事情を総合的に考慮して(最終的には裁判所が)判断します。裁判外の交渉や、裁判の現状としては、被害者側に厳しい判断になっている例が多いと思われますが、商業地域で日照被害を認めて損害賠償請求を認容した裁判例や、高層マンション近隣の住民の風害とそれによる財産的損害を認めた裁判例など、被害者側の主張を認めた事案もあります。
なお、電波障害については、障害原因側の建築主が対策をとるべきことになっており、重大な問題が起こることはほとんどありません。何か問題が起これば、受信障害対策施設を設けるように求めるなど、建築主へ対処してもらうようにします。
土地の所有者は、境界又はその付近において壁・垣や建物を築造し又は修繕するために必要な範囲で、隣地の使用を請求できます(民法209条1項)。この規定は地上権に準用されていますし(民法267条)、土地賃借人・使用借人にも類推適用が認められます。「必要な範囲」の使用といえるためには、具体的な場所・方法・期間・時刻などについて隣人の事情も考慮する必要があります。「隣地の使用」には、隣地の敷地内への立入りだけでなく、足場を組むことや資材を置くことも含まれます。ただし、隣人の承諾がなければ、その隣家への立入りは認められません。
なお、隣地に敷設されている排水管の修理については、下水道法によって隣地の使用承諾請求権が認められています。
隣地の樹木の枝が越境してきた場合、勝手にその枝を切ることはできません。
民法233条1項では、隣地の樹木の枝が越境してきたときは、隣人に対してその枝を切るように請求できると規定しています。隣人に対して越境した枝を切るように請求しても、隣人が応じない場合には、隣人に対してその費用で枝を切るよう請求する訴訟を提起する必要があります。ただし、枝の越境によってこちら側に損害が発生していない場合には、権利の濫用としてその請求が認められないこともあります。
他方、樹木の根が越境してきた場合には、隣人の承諾なしに切ることができます(民法233条2項)。
飼っている動物が他人に損害を加えた場合、飼い主は原則としてその損害を賠償する責任を負わされます(民法718条)。ただし、動物の種類及び性質に従って相当の注意を払って管理していたことを証明できれば、責任を負わなくてもよいとされています。
「相当の注意を払って管理していたといえるかどうか」については、動物の種類や性質、飼い主の熟練度などを考慮して総合的に判断されます。例えば大型犬や気性の荒い犬の場合には、厳重な管理が必要とされるでしょうし、実際に事件が起きた状況で、飼い主がどのような管理をしていたのかが問われることになります。
ただし、裁判例では、比較的小型の愛玩犬が近づいたために自転車の操縦を誤って7歳の子供が川に転落して怪我をしたようなケースで、犬が飼い主の手を離れて子供に近づいたことについて、相当の注意を欠くと判断されたものなど、この要件については比較的厳しく解釈されている例もあることに注意する必要があります。
なお、被害者側の対応に問題がある場合、例えば被害者が自ら犬に近づいて挑発したといった事情がある場合には、被害者側にも落ち度がありますので、賠償額が減額される可能性があります。
所有権が侵害されるおそれのある場合には、所有権を侵害するおそれのある者に対して、侵害を発生させる原因を取り除き、未然に侵害を防止するよう請求することができるとされます。これを所有権に基づく妨害予防請求権といいます。
隣家が所有する塀が自宅の敷地へ倒壊してしまうと、敷地という所有物の使用が妨げられることとなりますので、その原因となる塀の倒壊が起こらないよう予防工事をするように、塀の所有者である隣家の方に請求することができます。
この倒壊予防工事の費用については、原則として塀の所有者である隣家が負担することになります。もっとも、高低差のある隣地間において崖が崩れないように擁壁の工事を請求した事件では、擁壁ができることはどちらの土地にとっても利益があり、しかも擁壁の工事という莫大な費用がかかる工事について一方に工事費用全額を負担させることは適当ではないとして、工事費用を折半すべきとした裁判例もあります。このように、予防工事にかかる費用や塀が倒壊しそうになった原因などの具体的な事情によっては、隣地の方と折半して予防工事費用を負担すべき場合もあります。
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