労働(労働者側)に関するQ&A

トップページ > 相談内容 > 労働(労働者側)  > 労働(労働者側) に関するQ&A

労働(労働者側)

労働(労働者側) に関する問題に関しての相談例です。

内定取消

私は、現在、大学の4回生で、地元では、そこそこ名の通った会社から内定も貰っていました。決して大企業ではありませんが、この就職難の時代ですし、会社の悪い噂もありませんでしたから、当然、4月からそこで頑張って働くつもりでいました。 ところが、先日、突然会社から電話がかかってきて、「内定を取り消したい。」と連絡が入り、頭が真っ白になってしまいました。
何度会社に電話をしても、ただ業績が悪化したからと繰り返すのみで、詳しい理由は教えてはもらえず納得がいかないのですが、裁判となると時間もかかり大変と聞いています。
私も次の就職先を探す必要がありますし、このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか。
なにかいい方法があれば、教えてください。
  1. そもそも「内定」によって、労働契約は成立しているのでしょうか。
    「内定」には、口約束に留まるものから、内定通知が発せられるものまで、様々な形態がありますが、一般的には、内定通知を受け取ったり、誓約書を提出したりすることで、労働契約は成立していると考えることができます。本件では、実際に働きだすのは(労務の提供は)4月からとなっているので、始期付きの労働契約といえます。
    また、学校を卒業できない場合などには、当然に内定が取消される(労働契約が解約される)ことになりますから、解約権が留保された入社日を始期とする労働契約が成立しているということになります。
  2. 内定の取消しは、留保された解約権の行使ですが、だからといって、会社は、無制約に内定を取り消すことができるわけではありません。
    内定取消しの理由として認められるのは、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られます。
  3. 内定取消しの理由としては、具体的には、(1)予定の時期に卒業できなかった場合、(2)長期療養や逮捕・勾留のため、決められた期日に出勤することができなかった場合、(3)健康状態の悪化などによって職務遂行に必要な能力を欠くに至った場合、(4)重要な採用手続きを正当な理由なく履行しなかった場合などの労働者側の事情によるものと、(5)経営上の必要性に基づく場合などの使用者側の事情によるものが挙げられます。
    本件の場合は、内定取消しの理由が会社の業績が悪化したということですので、(5)経営上の必要性に基づく場合にあたりますが、経営上の必要性を理由とする場合、整理解雇の4要件(要素)を検討することが必要とされていますので、それについては、該当箇所を参考にしてください。
  4. いずれにせよ、「内定」段階でも労働契約が成立していますので、会社の合理的理由のない一方的な取消しは許されないということになります。
    したがいまして、内定が取り消された場合、会社に説明を求め、合理的な理由がない場合には取消しの撤回を求めることも可能ですし、従業員の地位にあることの確認や賃金の支払いを求めたりすることもできます。
    その場合の方法としては、弁護士を通じての交渉から、調停や訴訟、労働審判手続きを利用する方法まで様々なものが考えられますが、それぞれに長所、短所があり、どの方法が相談者にとって一番いい方法なのかは事案によって変わってきます。
    そこで、まずは法律の専門家である弁護士に十分に相談し、今後どのように対応するのがよいのか検討することをお勧めします。
  5. なお、現在では、厚生労働省から「採用内定取消し問題への対応について」の指針が出され、内定取消しの対象となった新規学卒者に対して、その理由について十分な説明を行わなかったときや就職先の確保に向けた支援を行わなかったときには、厚生労働大臣は、採用内定取消しを行った企業名の公表ができることとなっています。

整理解雇

私は、大学を卒業してから、ある会社に営業マンとして20年ほど勤めてきましたが、今月の初めに、突然、部長に呼び出され、「会社の経営が厳しいから、君は来月から来なくていい。退職金は会社の規程どおり支給するから。」と解雇通告書を渡され、リストラされることになってしまいました。
会社の経営状態が、いわゆるリーマン・ショック以降あまり良くないことは、知っていましたが、取締役らの報酬は上がっていると聞きましたし、今年も新入社員を複数名採用しています。また、私より営業成績の悪い社員はリストラされていません。
私は、数年前に、会社の経営陣に対し、残業代等の労働条件の改善を申し入れたことがあり、会社から嫌われていたかもしれませんが、長年、まじめに会社のために働いてきました。
このままでは、来月から路頭に迷うことになってしまいます。リストラにはどうしても納得がいきません。私はどうすればいいのでしょうか。
  1. 整理解雇の要件(要素)
    本件のようなリストラは、「整理解雇」とよばれ、労働者の責めに帰すべき事由がないにもかかわらずなされるものです。
    整理解雇が有効に認められるためには、これまでの裁判例では、(1)会社に人員削減の必要性があること、(2)会社が解雇回避努力をしていること、(3)その人を解雇することについて人選の合理性があること、(4)適正な手続きによって解雇がなされていること、という4要件を満たすことが必要とされたり、こうした4つの要素が重視されたりしています。
  2. (1)人員削減の必要性について
    まず、人員削減の必要性についてですが、裁判例では、企業の財政状況が赤字状態ならば、人員削減の必要性が認められる傾向があります。
    本件では、会社の経営状態が正確には不明ですが、新規採用がなされていること、取締役の報酬増額等の事情が事実であれば、この要件を満たさないと判断される可能性もあります。
    裁判や労働審判になった場合には、会社の決算書の開示を求めるなどして、会社の経営状態を明らかにすることになります。
  3. (2)解雇回避努力について
    整理解雇は、従業員に責任のない事情によって従業員を解雇するのですから、会社は、整理解雇をできる限り回避するための努力をすることが必要となります。
    例えば、解雇を回避するために、会社がとる措置として考えられるのは、退職金の上乗せを行って希望退職者を募集する、新規採用を控える、給料や賞与、役員報酬を減額するなどが考えられます。希望退職の募集はしばしばとられる措置ではありますが、従業員を希望退職へと誘導するだけの好条件であることまで求める裁判例もあります。
    本件では、相談者の主張どおり取締役の報酬が増額されたり新入社員の採用などがされている場合、会社の解雇回避努力は尽くされていないと判断されやすくなります。
    もっとも、本件とは異なりますが、退職者や解雇者の再就職支援措置を行っていることを理由に、整理解雇を有効とした事案もありますので、整理解雇直前における会社の動向をより詳細に調査する必要があります。
  4. (3)人選の合理性について
    人選の合理性とは、整理解雇の対象者をその人にすることについて、明確な基準があり、その基準が合理的に適用されているかどうかということです。例えば、一例としては、従業員のこれまでの勤務成績(欠勤日数、遅刻回数、規律違反歴など)や能力等が基準になりますが、これは、使用者の主観ではなく、客観的で合理的な基準によって決められていることが必要となります。他に客観的で合理的な基準として認められるものとしては、勤続年数、企業貢献度、年齢、経済的な打撃の低さ、転職の難易度などを考慮する裁判例があります。
    本件で、相談者は、「自分より成績の悪い従業員はリストラされていない。」と述べていますが、勤務成績等について明確な基準があったのか、それが従業員に対して説明されており浸透していたのかなどの事情を把握し、客観的にも成績が劣っていない相談者が解雇されていた場合には、この要件を満たさない可能性が高くなります。また、相談者が会社の経営陣に対し文句を言ったことが、整理解雇の背後にある場合(上司から「そんなこと言ってるとやめてもらうぞ。」などと言われていたなどの事情がある場合)には、この要件を満たさないと判断されやすくなる傾向があります。
  5. (4)手続の適正について
    この要件は、整理解雇に至るまでに、会社が従業員に対し、どの程度の説明をしているか、いきなり整理解雇に踏み切るのではなく、まずは任意の退職を促すなどの措置をとったか、十分な説明を従業員に対し行ったかなどがポイントとなります。事前の説明では、現在の会社の経営状況や解雇回避措置の内容、解雇される者の選定基準、退職金の条件などについて、丁寧に説明がなされる必要があります。
    解雇される者が組合員である場合には、組合員や組合に事前に説明をしたか、団体交渉に誠実に応じたかなどがポイントとなります。
    本件のように、何らの説明もなく、会社では事前の希望退職者の募集もなされていないのであれば、手続きの適正を欠くと判断されやすくなります。
  6. 本件の相談者の主張がすべて事実であると認められれば、解雇は無効となる可能性が十分ありうるといえます。
    整理解雇が認められるか否かについては、会社の経営問題とも関連し、難しい要素が多数含まれており、様々な事情を詳細に検討し、見通しを立てる必要があります。仮に解雇をされてしまっても、あきらめて泣き寝入りをするのではなく、ぜひ、お早めに弁護士にご相談ください。

普通解雇

いきなりクビと言われて会社をやめさせられることに到底納得がいきません。
私は、ある会社に半年前に入社し、営業部で勤務してきました。営業の仕事は、初めてでしたので、最初は戸惑うこともありましたが、最近はようやく仕事にも慣れてきたと思います。
先日、出社したところ、社長と営業部長に呼び出され、「お前は、3ヶ月連続して営業成績が営業部員のなかで最低だ。客からのクレームも何件か来ている。明日から来なくてよい。今日をもってクビだ」と言われました。
私としては、いきなりクビと言われて会社をやめさせられることに到底納得がいきません。私はクビになってしまうのでしょうか。
  1. 会社が解雇をするには、法律が定める解雇を制限するルールに従わなくてはなりません。
    その中でも特に重要なルールは、解雇については、客観的かつ合理的理由があり、社会通念上相当でなければ、認められない(解雇は無効になる)というルールです(労働契約法16条)。
  2. 勤務成績が良くないことを理由とした解雇が有効であるかは、勤務成績不良の程度や原因、改善の余地、企業による指導・教育、配置転換などの解雇回避措置、企業経営や運営への支障の程度などといった事情を検討して判断されることになります。
    本件では、あなたは、3ヶ月連続して営業部員のなかで成績が最低であるとのことですが、他の社員と比較して成績が悪いというだけではなく、成績の不良の程度が会社の業務遂行に支障を生じるなど、解雇しなければならないほど高く、かつ、会社において教育や指導をしても改善の見込みがない場合でなければ、解雇の客観的かつ合理的理由があり、社会的に相当であるとは認められないでしょう。
  3. 解雇については他にも色々なルールがあります。あなたのように即日解雇といわれた場合には、会社は以後30日間分の平均賃金を支払わなくてはなりません。
  4. 解雇に客観的かつ合理的理由があるかどうか、解雇が社会通念上相当であるといえるかどうかは、個々のケースで判断され、「この場合はかならずこうなる」とはっきり言うことができません。会社から解雇すると言われたものの、解雇が有効かどうかに疑問がある場合には、弁護士にご相談ください。

セクハラ(職場環境)

(労働者側)セクハラ上司に対する対処方法
同じ部署の男性上司にセクハラを受けて困っています。
先日、社員旅行があったのですが、宴会の席で、その上司は私の隣の席に座り、私の手を触ったり、抱きついたりしてきました。また、他の女性従業員は、その上司から、「おれの膝の上に座れ」、「最近色っぽくなったな」、「胸のサイズはいくつだ」などと言われていました。そのような上司の言動に対し、場の雰囲気を壊してはいけないと思った私達は、その場では何も言うことができませんでしたが、その言動によって私達は大きな精神的苦痛を受けました。
そこで、私が女性社員を代表して他の上司に、社員旅行でのセクハラ被害を訴えたのですが、酒の席の上でのことだし、君たちだって受け入れていただろうと言って、取り合ってくれません。
社員旅行における男性上司の行為はセクハラだと思いますし、今後このようなセクハラがないよう職場環境を整えてほしいのですが、会社に対してどのようなことを求めることができるのでしょうか。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることをいいます(男女雇用機会均等法11条1項)。男性社員の性的な言動により女性社員が苦痛を受けていることから、本件行為はセクハラにあたります。そこで、女性社員に損害が生じていれば、加害者たる男性社員に対し、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求めることができるのは当然です。
では、会社に対しては何も主張できないでしょうか。

雇用機会均等法は、事業主に対し、職場におけるセクハラを防止するために雇用管理上必要な措置を講じる義務を課しています。この内容を具体化したものが、厚生労働省の定めるいわゆるセクハラ指針です(平成18年厚生労働省告示第615号)。事業主には、①職場におけるセクシュアルハラスメントの内容・セクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を明確にして、労働者に周知・啓発すること、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備をすること、③職場におけるセクハラに係る相談の申出があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、セクハラの事実確認ができた場合には、被害者と行為者を引き離すための配置転換や行為者の謝罪等の措置、さらには再発防止に向けた措置を講じる義務があります。

本件では、社員旅行中の宴会におけるセクハラが問題となっていますが、勤務時間外の「宴会」等であっても、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して実質上職務の延長と考えられる場合には、「職場」におけるセクハラにあたり、事業主には同様の措置義務が課せられます。
そこで、セクハラの被害を受けた労働者としては、事業主に対して、セクハラの事実関係を迅速かつ正確に確認するよう求めるとともに、セクハラをした上司の配置転換や謝罪等の措置や、改めて職場でのセクハラに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講じるよう求めることが考えられます。

なお、セクハラ被害に対しては、たとえば、宴会の雰囲気を壊してはいけないなどという思いから、その場でセクハラ行為に対して抗議できないということもあり、行為を受け入れていたのではないかと非難されることがあります。この点、厚生労働省・精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会のセクシュアルハラスメント事案に係る分科会の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会報告書」(2011年6月28日)は、セクシュアルハラスメント事案の心理的負荷の強度を評価するにあたって留意すべき事項として、「被害者は、勤務を継続したいとか、行為者からのセクシュアルハラスメントの被害をできるだけ軽くしたいとの心理などから、やむを得ず行為者に迎合するようなメール等を送ることや、行為者の誘いを受け入れることがある。このため、これらの事実から被害者の同意があったと安易に判断するべきではないこと」を挙げています。仮に、セクハラに対して抗議、抵抗できなかったとしても、それだけで行為を受け入れていたとは言い難いででしょうから、事業主に対して、上記の措置を講じるよう求めていくことが考えられます。

一般的には以上のとおりですが、実際のセクハラ被害への対応方法については、セクハラ行為の内容やセクハラ行為が行われた状況、被害者とセクハラ行為者との関係(上司か、同僚か、等)、会社によるセクハラ防止策の有無・程度等の具体的事情により、千差万別です。そのため、万一セクハラ被害に遭ってしまった場合には、適切な解決方法を実現するためにも、早期に弁護士に相談することが重要です。

セクハラ(損害賠償請求)

(労働者側)会社に対する損害賠償請求
私(X・女性)は1年ほど前に今の会社へ転職してきたのですが、他社で同種の業務経験があるということで部長に重用され、部長(A)と2人であるプロジェクトに取り組むことになりました。これに対し、課長(Y)は、自身のプライドを傷つけられたとして、社内で「Xは、社内の者や取引先の人と性的関係をもつ等をしており、会社の信用を失墜させる下品な女だ」という事実無根の噂を広めました。
その後、新しく赴任してきた部長(Z)に何らかの措置をとってくれるよう懇請しましたが、部長(Z)は、「課長(Y)のプライドを傷つけないように」と言うのみで何らの対策も講じてくれませんでした。
その結果、噂は社内中に広がり、他の職員は私を避けるような態度をとるようになったので、職場に居づらくなり、結局退職せざるを得なくなりました。
このような場合、誰に、どのような請求をすることができますか。教えてください。

セクハラとは こちらの回答でも説明されているとおり、事業主は、職場におけるセクハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務があります。そして、職場におけるセクハラにつき、【1】「対価型セクハラ」(職場における性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること)と【2】「環境型セクハラ」(性的な言動により労働者の就業環境が害されること)の2種類に分類されています。たとえば、「対価型セクハラ」の例としては、部下に対する性的な関係を拒否された報復として解雇することなどがあります。また、「環境型セクハラ」の例としては、体に触る、抱きつく、卑猥な話をするといった性的な言動が挙げられます。性的な言動には、当該労働者に関する性的な情報の流布も含まれますので、課長(Y)がXに関する性的な噂を流した結果Xが職場に居づらくなったことは、環境型セクハラにあたります。このような課長(Y)の噂を流す行為は名誉毀損にあたりますし、雇用契約に伴い使用者が負う義務としての、良好な職場環境を維持する義務(職場環境配慮ないし調整義務)にも違反する行為です。

法的にどのような請求が可能か
(1)課長(Y)に対する請求
まず、課長(Y)の性的言動がXの名誉を毀損するものであることを理由として損害賠償請求をすることができます。
そのほか、課長(Y)の性的言動の継続性やXが職場に居づらくなり退社に至ったこと等から、精神的苦痛を受けた等を理由として損害賠償請求をすることも可能です。

(2)部長(Z)に対する請求
部長(Z)は、部下であるXが働きやすい職場環境を保つように適切に配慮・調整を行う注意義務(職場環境調整義務)を負っています。にもかかわらず、部長(Z)は、課長(Y)の性的言動を知りつつ何の対応もとっていないので、職場環境調整義務違反を理由とする損害賠償請求をすることも考えられます。

(3)会社に対する請求
課長(Y)の行為は、会社の信用に言及していることや、噂の相手方や発言の場などから見て職務に密接に関連する行為と考えられ、部長(Z)も部長として職場の管理をする職務を負い、(2)の義務違反は同人の職務に密接に関連していると評価できます。
そこで、Xは、会社に対し、課長(Y)及び部長(Z)の不法行為に関する使用者責任に基づいて損害賠償請求をすることができます(民法715条)。
会社が、セクハラが起こるような職場環境を放置していたような場合や、セクハラ被害を認識しつつ放置していた場合などには、働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務に違反したとして債務不履行責任(民法415条)を問う方法も考えられます。

(4)損害について
それでは、課長(Y)、部長(Z)、会社に対し、具体的にはどのような損害を請求することができるのでしょうか。
まず、Xは、職場に居づらくなり退職せざるを得ない状況に追い込まれたことにより精神的な苦痛を被っていることから、精神的損害として慰謝料を請求することができます。
また、課長(Y)、部長(Z)、会社が職場環境調整義務を果たしていれば、Xは退職せずに働き続けることができていたと考えられます。その場合は、退職時から現在に至るまでの間、会社から賃金を得ることができたはずです。したがいまして、財産的損害として逸失利益(退職後から現在に至るまでの賃金相当額)を請求することができます。

最後に
本件に関する回答は以上ですが、そもそも違法な侵害行為があったかどうかについては、加害行為の内容や態様など諸般の事情を考慮して社会通念上許容される限度を超えるものかどうかが判断基準となりますので、その判断については個々の具体的な事情によらざるを得ません。

また、慰謝料等の損害額についても種々の事情を総合考慮して判断されるものです。
したがいまして、個々の事例に則した適切な判断を仰ぐためにも、どのような法的請求が可能なのか弁護士に相談されることをお勧めいたします。

パワハラ(損害賠償請求)

(労働者側)パワハラへの対処及びパワハラを原因とする精神的疾患に対する賠償
私は、入社3か月目の新入社員なのですが、上司によるパワハラがひどく、大変困っています。些細な仕事上のミスを原因に他の社員の前で怒鳴られたり、「頭が悪い」、「採用するんじゃなかった」、「給料泥棒」などといった人格否定的な発言をされることも日常茶飯事です。
そのため、精神的にまいってしまい、先日、病院へ行ったところ、うつ病であるとの診断を受け、しばらく会社を休職せざるを得ないことになりそうなのです。パワハラを行った上司を許すことはできませんし、休職中の賃金が支払われるのかについても不安に思っています。
この場合、会社またはパワハラを行った上司自身に対して何らかの賠償を求めることはできないのでしょうか。

パワハラ(パワーハラスメント)とは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為のことをいいます(労働政策総合推進法30条の2第1項)。上司による人格を否定するような発言は、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えるものなので、パワハラに該当します。 上司によるパワハラにより休職せざるを得なくなった場合、まず、会社に対して損害賠償請求を行うことが考えられます。会社は、その雇用する者の不法行為により被害者に損害が生じた場合、使用者責任(民法715条)を負うこととされています。また、会社には、雇用される者が安全に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)があり、職場内でパワハラ被害が生じたということであれば、会社がこの安全配慮義務に違反したとして、債務不履行責任(民法415条)を問うことも可能です。

次に、パワハラを行った直接の上司に損害賠償を求めることも考えられます。その場合には、上司によるパワハラが不法行為にあたるとして不法行為責任(民法709条)を問うこととなります。
以上のような損害賠償請求を行う場合、その損害の内容としては、治療費、仕事ができないことにより被った経済的損害、精神的損害(慰謝料)が考えられます。かつては、パワハラに基づく損害賠償請求が裁判所で認容されたとしても、損害額としては低額な慰謝料しか認められないことが多いと言われていました。しかし、最近では、被害者がパワハラに起因して重度の精神疾患(PTSD等)を発症した場合、それにより将来の労働が困難になった分の逸失利益についても損害として認められる事例も現れています。

ここで、裁判所によりパワハラに基づく損害賠償が認められるためには、その証拠が存在することが必要となります。パワハラにあたる行為が存在していたことを証明する証拠としては、録音・ビデオテープ、パワハラの被害内容を記載したメモ・日記、パワハラの目撃者がいる場合にはその人の証言等が挙げられます。メモや日記に関しては、それが作成された時期(被害にあった際に逐一記載されていたものか、後から一括して記載されたものか)、客観的事実を詳細に記載しているかどうかなどにより、証拠としての価値が大きく異なってきますので、その作成方法には注意が必要です。パワハラにより被った損害額を証明する証拠としては、医師の診断書、給与明細、休職証明書等が挙げられます。

その他に、休職中の賃金の補償を求める手段としては、労働基準監督署に対して労災申請をすることや、健康保険組合に対して傷病手当の申請をすることもできますが、その手続に際しても、診断書等の疎明資料が必要とされます。また、労災申請に比べて、傷病手当の方が早く支給されるのが一般的です。その後、労災認定されて休業補償給付の支給が決定されて、傷病手当金と休業補償給付が重複することになれば、併せて給付を受けることはできず、給付額が調整されることになります。

パワハラ被害への対応については、パワハラにあたる言動の内容とそれが生じた状況・頻度、会社側の上司の言動に対する対処、会社内での業務に関する指導研修体制等の具体的事情により、どのような解決が見込めるかが異なってきます。そのため、不幸にも現実にパワハラ被害に遭ってしまったときには、証拠の確保等を迅速に行い、適切な解決方法の見通しを立てるためにも、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

定額残業代

私は、Aデパートの服飾店に勤務するX(32歳女性)です。
先月末から今月初めまで、勤務する服飾店では売り出しセールが開催され、その期間中は毎日のように残業がありました。残業時間も長く、一日平均3時間にも及び、売り出しセール期間中の残業時間の合計は30時間にも及びました。
そこで、勤務先に残業代の請求をしたいと思い勤務先会社に問い合わせたところ、「特別手当として2万円を支給しているから、残業代は特別手当の形ですでに支払われています。」と言われました。
残業代を正規に計算すれば、少なくとも3万円は上回るはずですし、また、特別手当という支払い方は正当なやり方なのでしょうか。

結論

  1. 残業代を固定額の手当(本問は「特別手当」)として支払う方法は、要件を満たしておれば合法ですが、その場合でも労基法に基づいて算定した残業代の方が多い場合には、差額を請求することは可能です。要件を満たしておらず違法となる場合は、特別手当で残業代を支払ったものとは認められません。改めて残業代を計算し、請求することが可能です。
  2. 会社の残業代の支給方法については二つの問題があります。
    一つは、(1)「特別手当」の支払いによって残業代が支払われたと認められるのか、もう一つは、(2)仮に「特別手当」の支払いによる残業代の支払いが認められるとしても、1万円以上の差額は請求できないのか、という問題です。
    まず、(1)についてお答えします。このように、残業代を固定額の手当で支払う制度を「定額残業代」や「固定残業代」といいます。この「定額残業代」制度については、法律上の規定はありませんが、判例では、現実の時間外労働に対する労働基準法37条所定の割増賃金額以上の額が支払われていれば、直ちに違法にはならないとされています。ただし、その前提として、同条所定の額が支払われているか否かを判断できるように、割増賃金部分が判別できなければならないとしています。
    すなわち、「特別手当」という制度そのものは直ちに違法とまではいえないということかと思われます。ただし、支払い額が適正であることや、時間外労働手当が基本給などのほかの費目から明確に分離して計算でき、残業代部分が判別できることが必要になるということです。
    また、「特別手当」のような「定額残業代」の制度を運用するためには、このような制度について契約上の根拠が存在することが必要です。雇用契約書に明確に記載されていたり、勤務先会社の就業規則に時間外労働の割増賃金に代わる定額残業代の制度が採用されていることが記載されており、就業規則が周知されていることも、「特別手当」の正当性を根拠づける重要なポイントになるといえます。

    まとめると、残業代を固定額で支払うことについて契約上の根拠があり、かつ、時間外労働手当が基本給などのほかの費目から明確に分離して計算でき、残業代部分が判別できることが必要であるということです。

    次に、(2)についてお答えしますと、「定額残業代」はあくまで現実の時間外労働に対する労働基準法37条所定の割増賃金額以上の額が支払われていることが前提となっており、現実の残業代の額が「定額残業代」の額を上回る場合は、差額の請求が可能です。

    つまり、Aさんが言うように、労働基準法に従った正当な計算方法によると、特別手当2万円を超える割増賃金が発生しているのであれば、その差額については請求することができます。
    二つの問題については、これで回答となりますが、賃金の問題は、請求手続に問題があることや、「定額残業代」以外にも他の問題が隠れていたりすることもありますので、問題があると思った際には、弁護士に相談することをお勧めいたします。

残業代(休憩時間)

私は、事務職として会社に勤めています。
私の勤めている会社では、昼休みでも外出してはならないと言われており、従業員は皆社内で弁当を食べています。
昼休みは一応休憩ということになっていますが、電話応対や来客が非常に多く、ゆっくり休むということは全くできません。
この昼休みの時間について実際には休憩時間ではないということで、会社に昼休みの時間についての賃金を請求することはできないでしょうか。
  1. 休憩時間は、労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されることを保障される時間であり、労働基準法34条3項は、「休憩時間を自由に利用させなければならない」としています。
    したがって、そもそも、外出が制限されるなど自由に休憩できない場合は、原則として、休憩時間とはいえません(ただし、合理的理由がある場合には利用方法の規制が可能な場合もあります。)。
  2. そのため、休憩時間という名目であったとしても、労働から完全に解放されておらず、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間は労働時間であり、この時間についても使用者は労働者に対して賃金を支払わなければなりません。
    裁判例においても、労働者が実作業に従事していない時間であっても、使用者から場所的な拘束を受けたり、一定の事態が生じた場合に対応を義務づけられたりしている時間については労働時間とされることが多いです。もっとも、裁判例の中には、休憩中に顧客応対をしていたとしても、その頻度がかなり稀だった場合には、労働時間だとは認めなかったものもあります。
    あなたの場合は、昼休みに外出できないわけですから、場所的に拘束されていると考えられ、休憩中の電話の応対や来客が非常に多いということですので、昼休みの時間は休憩時間ではなく、労働時間だと認められる可能性は高いといえます。
    昼休みの時間が労働時間であるとしたら、あなたは昼休みの時間に相当する賃金を会社へ請求することができます。
    そして、仮に昼休みの時間とその他の勤務時間を合わせた時間が1日8時間を超えていたり、1週間40時間を超えていた場合には、25%の割増率を加味した残業代を請求できます。なお、割増率については、1ヶ月について60時間を超えた場合には50%以上となりました(中小企業については適用が猶予されていましたが、2023年4月以降は適用されることになります。)。

残業代(管理監督者)

私は、大手飲食店チェーン店で店長として働いています。店長として年額500万円の賃金を受け取っていますが、店員のシフトが埋まらない部分を埋めなければならず、労働時間は、とても週40時間・1日8時間におさまりません。
しかし、会社からは、店長は管理職にあたるとの理由から、残業代は支払われていません。
会社に、残業代を請求することはできないのでしょうか。
  1. 結論
    店長であっても、管理監督者に該当しない場合もあり、残業代を請求できる可能性があります。
  2. 店長が管理監督者であるのかが問題です。
    使用者は、労働者に対して、休息時間を除いて、週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならず(労働基準法32条)、これを越えて労働させるときには、割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
    しかし、これには例外があり、本件と関連するものでいうと、監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)については、労働基準法における労働時間に関する規定が適用されず(労働基準法41条2号)、週40時間・1日8時間を超える労働の場合にも、残業代を支払う必要はありません。
    したがいまして、本件でいう大手飲食店チェーン店の店長が、管理監督者にあたらなければ、超過勤務分の残業代は請求できるということになりますし、管理監督者にあたれば、残業代は請求できないということになります。

    管理監督者について、労働時間に関する規定が適用されないとされているのは、管理監督者が労働時間規制を越えて活動することが要請される重要な職責をもち、現実の勤務態様が労働時間規制になじまないからです。
    そこで、ここでいう、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいうとされています。管理監督者に該当するかどうかは、名称にとらわれず、実質的に管理監督者としての権限と地位を与えられ、出退勤などの労働時間についての厳格な制限を受けず、このような地位にふさわしい賃金面での待遇が基本給や手当などでなされているかどうかにより、判断されます。
    したがいまして、店長という役職であるだけで、直ちに管理監督者であるということにはなりません。店員のシフトが埋まらないときには店長がシフトを埋めなければならないことは、出退社の自由度が少なく管理監督者にはあたらない方向に働きそうです。そのほかに、出退勤時間の自由があるのか、店長として経営や人事に関する権限が与えられているのか、会社の規模や職務内容からして年額500万円の賃金が管理監督者にふさわしい処遇であるか等によっても、管理監督者にあたるか否かの判断は異なると思われます。

    なお、管理監督者に該当するとしても、使用者は、労働者に対して、深夜労働に対する割増賃金を支払わなければなりません。
    このように、管理監督者であるかは、さまざまな事由を考慮して判断されるものですので、詳しい勤務条件や態様等の事情を示して、弁護士に相談されることをお勧めします。

競業避止義務違反による退職金不支給

私は、ある会社で外回りの営業をしていた者です。人間関係に不満があってその会社を退職したのですが、商品知識を活かそうと思い、1か月程度で同業他社に就職しました。退職金は退職から2ヶ月後に支給されることになっていたのですが、退職金規定に、同業他社に転職した場合は退職金が出ないという条項があったため、転職したことを会社から指摘されて、不支給だと言われました。退職金をもらうことはできないのでしょうか。
  1. 結論
    事情によっては、退職金の全部もしくは少なくとも一部を請求できる可能性があります。
  2. まず、退職金は、一般的に、在職中の功労に対する報償の性格があると考えられていますが、同時に、賃金の後払い的な性格、すなわち在職時の労働に対する対価としての性格もあり、賃金の一種であるとされています。既に働いた分への対価の意味がある以上、会社側が一方的に削減したり、不支給にすることはできません。退職金を不支給にするには、労働契約や就業規則上の根拠が必要となります。
    ご質問では、退職金規定に条項があったということですので、就業規則上の根拠がある場合だと推測されます。もっとも、そもそもそのような同業他社への就職を禁止する必要性が高くない場合や、同業他社への就職が禁止するのに必要とされる期間が長い、あるいは対象となる地域も広いなど、制限の範囲が広い場合などには不支給条項そのものが不合理であると裁判で認められ、不支給条項が無効になります。そして、無効になった場合、法律上の義務としては、退職金が全額支給されることになります。
  3. また、仮に不支給条項そのものが不合理であると認められない場合でも、裁判例によれば、退職金不支給条項に文面上該当するからといって、常に退職金を不支給にすることが許されるわけではないとされています。すなわち、従業員に労働の対償を失わせることが相当であると考えられるような会社に対する顕著な背信性がある場合に限って、言い換えれば、従業員が会社に対し、退職金をもらえなくなっても仕方ないような重大な裏切り行為を働いた場合に限って、不支給条項が適用され、退職金請求権が失われると考えられます。具体例として、同じ部門の従業員多数を勧誘して一緒に転職し、その部門を麻痺させた場合や、前の会社に勤めていたことによって知った営業秘密を自己の利益のために利用して会社に重大な損害を与えた場合、などといった在職中の功労を抹消してしまう顕著な背信性が認められる場合に限って、不支給条項にしたがって全額不支給とすることが認められます。
    したがって、このような顕著な背信性が認められない場合には、退職金を不支給とすることは認められません。また、背信性が認められる場合でも、その背信性の程度によっては、例えば退職金の半額の減額など一定の減額のみが認められ、退職金の一部を請求できることもあります。
  4. ご質問の限りでは、背信性の有無について判断できないので、転職後の事情の他、退職金の計算方法や、退職の経緯などを詳しくお聞きする必要がありますが、単に同業他社に就職しただけでは上記のような背信性が認められるわけではなく、退職金を請求できる可能性もあります。弁護士に相談することをお勧めいたします。

休日労働・休日の振替

私が勤めている会社は、業務量が多いうえ、納期が非常に厳しいので、納期近くなると休日出勤をせざるを得ません。
ある月、私も納期間近で休日出勤をしたので、休日手当が貰えると思っていましたが、支払われていませんでした。おかしいと思って上司に質問をしたところ、「うちの会社は、休日出勤をするには会社の事前承認がいる。就業規則にも書いてある。君は事前承認を受けずに働いたのだから、休日手当は支払われないが、今回は特別に代休を与える。」と言われてしまいました。
翌月、再び納期間近で休日出勤をせざるを得ない状況になったため、上司に休日出勤の事前承認を求めたところ、今度は、振替休日の指定をされました。確かに、私の会社の就業規則には、会社が振替休日をできる旨の規程がありますが、私は、働いた分の賃金が欲しいと思っています。
これらの場合であっても、私は休日手当を受け取ることはできますか。
  1. これについては、3つの問題があります。すなわち、(1)事前承認がなければ休日出勤をしたとしても、休日手当は支払われないのか、(2)代休を与えれば休日手当を支払わなくてもいいのか、(3)会社の振替休日の指定に従わなければならないのか、という問題です。ただし、これらについては、一つの回答があるわけではなく、個々の具体的事情によって結論が変わりうることに注意する必要があります。
  2. まず、(1)就業規則に定められている事前承認がなければ休日手当は一切支払われないのか、という問題についてです。
    原則としては、就業規則上、事前承認のない限り時間外労働をしてはならない規程があったとしても、時間外休日労働の実績が現に存在し、会社がそれを黙認しているという実態があるならば、労働時間であると認められ、休日手当の支給が必要となります。もっとも、会社から事前承認無しに休日出勤をしないようにという指導が徹底され、業務が残っている場合でも休日出勤しなくてもすむための措置(残務について上司への引継ぎができる旨言われており、実際に引継ぎができる等)がしっかりととられており、休日出勤して業務を行う必要性がないにもかかわらず出勤をしたような場合には、労働時間であると認められず、休日手当が支払われない場合があります。また、その程度が過度であった場合には、服務規程違反により処分される可能性もあるので、注意が必要です。
    あなたの場合、業務量が多く、納期も厳しいので休日出勤をしなければ間に合わないということですので、基本的には休日手当の支払を求められると考えられますが、その他の事情にも左右されますので、弁護士にご相談をされることをお勧めします。
  3. 次に、(2)代休を与えれば休日手当を支払わなくてもいいのか、という問題についてです。
    「代休」とは、特定の日に労働義務を免除するというもの、すなわち、会社としては給料を支払う義務はあるが、労働者の労働義務は免除するという日のことを指します。そのため、会社は、「休日出勤をした」という事実に対して他の日に代休を与えたとしても、休日に労働させたという事実は変わりませんので、休日手当の支払が必要となります。
    従って、会社が休日出勤に対して事後的に代休を与えた場合であっても、原則として会社は休日手当の支払を免れることはできず、休日手当の支払いを求めることができます。
  4. 最後に、(3)振替休日の指定に従わなければならないのか、という問題についてです。
    「振替休日」とは、法定または就業規則上の休日を他の日に振り替えることをいいます。この場合は、振り替えられた日が法定の休日となるので、元々休日であった日に労働したとしても、休日労働にはならず、休日手当の支給はなされません。
    この振替休日は労働者の同意を要さずに行なわれるため、常に認められるわけではありません。労働者の同意なく振替休日が認められる要件としては、
    (1)就業規則上、業務上必要があるときは休日を他の日に振り替えることがある旨の定め(振替休日を行う定め)があり、
    (2)所定休日到来前に休日の振替を行うこと(具体的日時の変更まで示すことが必要) の2つの要件を両方満たした場合に限られます。
    もっとも、この場合であっても、使用者側の休日の振替方法に問題があった場合(使用者の指揮命令権の濫用と認められるような場合)、労働基準法35条2項の法定休日が確保されない場合(指定日に休日が3回以下しかないような振替)には、休日の振替は違法となります。
    あなたの場合、就業規則上に振替休日ができる旨の規程があるようですので、休日の振替を必要とする合理的な理由がある場合には上記(1)の要件は満たしますが、(2)の要件や休日の振替方法に問題がある可能性があります。
    そこで、これらの点を明らかにするためにも、弁護士に相談されることをお勧めします。
    また、この問題については、休日の振替により、休日手当の支払いが認められない場合でも、本来休日であった日も働くことで、その週の労働時間が法定労働時間(原則週40時間)を超える場合は、時間外手当の支給を別途請求することができますので、この点も併せてご相談されることをお勧めいたします。

まずはこちらまでお電話を...
06-6364-1248
(予約受付時間)平日 午前9時〜午後5時
土曜 午前10時〜午後3時30分