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チケットを転売すると犯罪になるの?

2020.01.16


楽しみにしていた来週のコンサート,急用で行けなくなってしまいまし
た。
幸い,友だちが,定価で引き取ってあげるよ,と言ってくれています。
ただ,チケットを転売すると犯罪になるという話を聞いた覚えがあり,心配しています。
売っても大丈夫ですか。


1 チケットを転売すると犯罪になる場合がある

10月,人気男性アイドルグループのチケットを転売した疑いで,ある女性を,大阪府警に書類送検されたとの報道がありました。「チケット不正転売禁止法」違反の容疑による最初の摘発例であるとされています。そのアイドルグループのファンだったというこの女性は,これまでにこのグループのイベントのチケットを20席近く売ったことがあり,摘発された事件では,定価の13倍で売ったということのようです。

また。11月には,プロ野球のオールスターゲームなどのチケットを転売したとして,男性が,この法律によって,初めて逮捕されたという報道もありました。いくつかの記事を見比べますと,宝塚歌劇団のチケットも転売していたとのことです。そうだとしますと,人気のある色々なチケットを手広く転売をしようとように見えます。


2 チケット転売禁止法とは?

チケット不正転売禁止法(正式には,「特定興業入場券の不正転売の禁止等による興業入場券の適正な流通の確保に関する法律」という長い名前の法律です)は,チケットの正常な流通のために,平成30年12月に制定されたものです。今年6月から施行され,実際に適用されるようになっています。法律が定める刑は,1年以下の懲役と100万円以下の罰金です。悪質な場合は,懲役と罰金の両方が科せられることがあります。
この法律ができるまでは,イベント会場付近での「ダフ屋」行為は軽犯罪法で処罰されることがあるだけで,ネットなどでの高額転売は禁止されていなかったのです。その結果,チケットが発売されるや否や高値で転売しようとする人たちに買い占められ,手に入りにくくなっていました。そのような状況の改善のために,この法律ができたのです。ただ,全てのチケット転売がこの法律で禁止されたわけではありません。相談者の方の場合は,心配はなさそうです。

では,どんなことをすると,この新しい法律で処罰されるのでしょう。

3 転売が禁止されるチケットは限定されている

転売が禁止されるチケットは,①主催者に無断で売ることが禁止されていて「禁止」ということが券面に記載されている(電子チケットの場合は映像面に表示されている),②イベントの日時・場所,座席などが決まっている,③その座席を買った人を確認する措置がとられていて,そのことがチケットに書かれている,という条件に全部あてはまるものに限られています。これを,この法律は,「特定興業入場券」と呼んでいます。

転売をする必要が出て来た場合には,まずはチケットを見て,この点を確認しましょう。

4 定価以下での販売や1回限りの販売は法律違反ではない

禁止されるのは,そういうチケットを,買ったときよりも高く,繰り返し売ることです。正確には,実際に売るところまで至らなくても,繰り返し高く売ろうと考えて購入した時点で,この法律に触れることになってしまいます。友だちと一緒に行くといった予定もないのに1人で大量に買い付けたりしますと,その事情を説明できなければ,高く売ろうと考えて購入したと疑われる可能性があると思われます。さらに,販売サイトなどで高値を付けて売ろうとしますと,買い手が付かなくてもこの法律に触れる,ということになります。


5 定価以下で売れば処罰はされないけれど

一方,相談された方のように,急用が入って行けなくなってしまったイベントのチケットを知人に定価より安く売ったり,あるいは無償であげたりしても,この法律で処罰されることはありません。ただし,この法律が適用されるチケット(特定興業入場券)は,主催者が転売を禁止しており,入場の際に本人確認などを行っています。法律違反にはならなくても,入場ができなくなる可能性があることに,注意が必要です。

冒頭のアイドルのコンサートのチケットを転売した女性は,買ってくれた人が会場に入ることができるように,その購入者の顔写真を元々の購入者の免許証に貼るという「サービス」までしていたと報道されています。もしこれが本当だとしますと,公文書偽造という罪になります。これはかなり重い犯罪です。そういうこともあって,最初の摘発例になったのかもしれません。

6 ルールを守ってイベントを楽しもう

来年の東京オリンピックをはじめ,注目されるイベントのチケットは多くの人がほしがります。購入したものの行けなくなったといった場合に,ネットを使えば高く買いますという人をたくさん見つけることができるでしょう。しかし,転売は,この法律で処罰対象となっただけではなく,主催者が禁止することも多くなっています。

ルールを守ってイベントを楽しみましょう。

 
<回答者>
大阪弁護士会 広報室

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