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取り調べの可視化 -密室の扉が開く-

2019.06.10

「この調書では私の身上についてお話しします。私の出生地は大阪府の○△市です。位記、勲章はもらったことがありません。年金は・・・」

刑事裁判に提出される被疑者(容疑者)の「供述調書」の1通目は、ほとんどがこんな始まり方をします。事件の核心についても、被疑者が自分でその真相をとうとうと語ったかのように書かれています。

身上?位記?こんな言葉が被疑者の口から出てくるでしょうか。

 

取り調べでは、被疑者の話を聞き、警察官や検察官がその内容を文章にして、被疑者に確認させてサインと捺印がなされる、という流れでできるのが「供述調書」です。

出来上がった調書は、実際は警察官や検察官がまとめたものです。とっても読みやすいですが、被疑者がこんなことを言ったのか?と思うような記載もちらほらと見られます。

実際、被疑者にあらためて調書の内容を確認してみると、「そんなつもりで言ったのではない。」と言う場合があります。脅されてサインをしてしまった、やったと認めればすぐに釈放されると言われた、警察官の暴行があったなどという事実が後の裁判で認められた例もあります。

 

しかし、これまでの取り調べは、外部との連絡を遮断された「密室」で行われていました。弁護人も立ち会えません。このため、裁判でその取り調べの様子を確認する手段がどうしても少ない、という問題があったのです。

 

6月1日、この「密室」の扉が開かれました。

裁判員裁判対象事件や検察の独自捜査事件という重大事件に限ってですが、逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全課程の録音・録画(可視化)を義務付ける改正刑事訴訟法が施行されました。

この録音・録画には、弁護人や裁判官・裁判員が取り調べの状況を後から確認できるというところに大きな意義があります。

取り調べの録音・録画は、法律の施行前から試験的に実施されていました。ですから、6月1日を境に取り調べのやり方ががらっと変わるというわけではありません。しかしそれでも、法律上の「義務」としての運用が始まったことは、刑事司法制度の大きな転機といえます。

 

とはいえ、そもそも間違っている供述調書を作られないことが大切です。そのためには、取り調べの前から弁護士のアドバイスを受けておくことが肝心です。

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