2023.04.14
例えばあなたの相続人が長男と次男のお二人であれば、あなたの遺産はこの2人に等分で相続されます。しかし、例えば次男に多く渡したいというような場合は、遺言を作っておく必要があります。
また、生前に既に次男にまとまった財産を渡していることもあるかもしれません。これは「特別受益」と言われ、いわば遺産の先渡しと扱われますので、亡くなったときに次男に渡る財産は減るのが原則です。しかし、先渡し分は無視して等分に遺産を分けてほしいと考える場合、それを遺言などで明確にしておくべきです。
ただし、長男にも「遺留分」という権利があり、遺産の4分の1は請求できます。その分を確保せず次男に遺産を渡してしまいますと、次男は長男からその分を金銭で精算する必要が出て来ます。次男に、特に換金しにくい財産をたくさん渡してしまいますと、次男は長男に支払う金銭の工面に苦労するということになるおそれもあります。
例えば夫婦同然のパートナーではあるけれど戸籍上の夫婦ではない場合、そのパートナーには相続権はありません。同性婚の場合もそうです。地方自治体などでは、同性婚のパートナーを配偶者のように認める制度も生まれつつありますが、相続においては、残念ながら「他人」でしかありません。そういうパートナーに遺産を渡そうと思えば、遺言を作る必要があります。
経営する株式会社の全株式100株を持っていたとします。あなたが亡くなり5人の子どもが相続する場合、5人が20株ずつの株主になる・・・、というわけではありません。遺言がなければ、いったんは100株全てが5人の共有になるのです。共有の株式は、議決権行使の方法などがかなり複雑です。株主総会をうまく開催できず、後継の経営陣を決められないといった事態にもなりかねません。長女に80株、長男に20株を相続させる、といった遺言を是非作りましょう。
あなたが結婚しておらず、子や孫がおらず、尊属(親や祖父母など)も既に亡くなっており、兄妹も甥姪もいない場合には、相続人はいないことになります。「おひとり様相続」などと呼ばれることもあります。このようなケースでは、遺言を遺しておかなければ、遺産は、最終的には国のものになってしまいます。新聞報道によりますと、2021年にこのようにして国に入った遺産は647億円にものぼり、10年前のほぼ倍になったということです。縁がある人や団体に遺産を渡すという遺言を考えてみましょう。
未成年の子どもが相続人になる場合、亡くなってからの遺産分割協議に手間がかかる場合があります。このような場合も、遺産分割協議を作らずに済むように、遺言を作成しておくほうがよいでしょう。
お父さんが亡くなって、その妻(お母さん)と未成年(18歳未満)の子どもが残されたとします。子どもが未成年ですから、遺産分割協議は、お母さんが子どもの代理人として行い、書類に署名や捺印をすることなります。しかし、この例では、お母さん自身も遺産分割協議の当事者です。「自分」と「子どもの代理人」という両方の立場で遺産分割協議書を作ることはできないのです。この場合、家庭裁判所に申立てをして、「特別代理人」を選任してもらい、そのうえで遺産分割協議をする必要があります。このようなことを避けるためには、たとえ法定相続の割合のとおりに財産を分ける場合であっても、遺言書を作っておくことをお勧めします。
<回答者>
大阪弁護士会 広報室
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