2022.09.26
令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました。出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため、様々な措置を講じることが改正の趣旨とされています。
大きな改正内容としては、
①「産後パパ育休」制度の創設
②育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・意向確認の措置の義務付け
③育児休業の分割取得
④有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
⑤育児休業給付に関する所要の規定の整備
が挙げられます。
特に、今回の改正の目玉であり、令和4年10月1日から施行される①「産後パパ育休」制度の創設と③育児休業の分割取得について、解説していきます。
まず、現行の育児休業制度について、ご説明します。
1歳未満の子を養育する労働者(男女を問いません。)は、その子が1歳になるまでのある期間を特定して育児休業を事業主に申し出ることができます。父母の労働者がともに育児休業を取得する場合には1歳2カ月までの間、育児休業を取得することができます(パパ・ママ育休プラス)。また、保育所に入れない場合などには1歳6カ月、さらには最長2歳になるまで延長することも可能です。
ただし、育児休業の申出は、原則として1人の子について1回に限られており、分割して取得することもできませんでした。例外は、「パパ休暇制度」です。母親である労働者の8週間の産後休業期間にあわせて育児休業を取得した父親である労働者が、一定期間経過後に、再び育児休業を取得できるという制度です。
このように、現行の育休制度の下でも、父親自体が育児休業制度を利用することは可能であり、パパ休暇制度によって、ある程度柔軟に父親が出産直後の育児にも関わりやすくはなっていました。
しかしながら、令和2年度においても、取得率は12.65%にとどまっており、女性(81.6%)の取得率と比較しても、大きな差がみられるところでした。
そこで、男性の育児休業制度を今まで以上に促進するために、「産後パパ育休」制度の創設に至りました。
「産後パパ育休」制度とは、子の出生直後の時期に男性が柔軟に育休を取得できる新たな育児休業の制度です。子の出生後8週間以内に最長4週間までの育児休業を2回に分割して取得できます。制度概要は、下記の表を参照してください。
(厚生労働省都道府県労働局雇用調整・均等部(室)「育児・介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000909605.pdf)から抜粋)
これだけ聞くと、パパ休暇制度との違いがわかりにくいかもしれません。
新設された「産後パパ育休」制度は、子の出生後8週間以内に、育休を2回までに分けて取得することができる(ただし、初めにまとめて申し出ることが必要)とされています。そのため、その頃にこの日は必ず出社しないといけないといった場合でも、その日を外して取得することも可能となりました。この制度を利用することで、産後休業期間中の母親をより手厚く父親がサポートすることが期待されます。
しかも、「産後パパ育休」制度においては、労使協定を締結している場合には、労働者が合意した範囲で、休業中であっても就業することが可能となります。
これによって、従来、男性が育児休業を取得する大きなネックとなっていた、まとまった期間仕事を離れるのは難しいといった問題が解消されることが期待されます(なお、「産後パパ育休」制度の新設に伴い、パパ休暇制度は令和4年9月30日に廃止されることになります。)。
既に述べたように、現行の育児休業制度では、育児休業を分割して取得することはできませんでした。
しかし、今回の改正によって、2回に分割して取得することが可能となりました(「産後パパ育休」制度とは異なり、2回分割する場合でも、まとめて申し出る必要はなく、さらに柔軟な取得が可能となっています。ただし、1歳までの育児休業に限られます。1歳6カ月、2歳までの育児休業については分割できない点は現行どおりです。)。
また、現行では、1歳以降の育児休業の開始日は、各期間の初日(1歳6カ月までの育児休業は1歳到達日の翌日、2歳までの育児休業は1歳6カ月到達日の翌日)に限られていましたが、改正によって、配偶者が1歳以降の育児休業を取得する場合には、配偶者の育児休業終了予定日の翌日以前を本人の育児休業開始日とすることが可能となりました。
これによって、母親が1歳以降の育児休業を先に取得し、期間の途中で父親が母親と交代して育児休業を取得することが可能となるなど、より子どもの成長を両親で見守ることができるようになります。
新設された「産後パパ育休」制度及び育休の分割取得制度の具体的な利用例は下記の図をご覧ください 。
厚生労働省都道府県労働局雇用調整・均等部(室)「育児・介護休業法令和3年(2021年)改正内容の解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000909605.pdf)12頁参照。
紙幅上、育児・介護休業法の改正内容をすべてお伝えすることはできませんが、現行の制度と比較して、かなり柔軟に育児休業が取得できるようになったことがご理解いただけたかと思います。
今後、さらに男性が育児休業を取得することが広まっていければ良いなと感じる次第です。
<回答者>
大阪弁護士会 垂水 祐喜 弁護士
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