2022.03.30
「成人する」とか「成年になる」とかといった言葉を聞いたことがありますよね。一般的には、成人すると「大人になった」と言われ、成人式などでお祝いもされますね。
ところで、法律の世界でも、“大人”と“子ども”は区別されています。
民法という法律では、「成年」になった人を“大人”として扱っており、成年になっていない人、つまり「未成年」の人を“子ども”として扱っています。
これまで、民法で“大人”として扱われる年齢、つまり成年年齢は、20歳とされてきました。
しかし、この規定は改正され、成年年齢は18歳と改められました。
そして、この改正が、2022年4月1日に施行されることになります。
つまり、2022年4月1日からは、18歳になれば、民法では“大人”として扱われることになるのです。
これを「成年年齢の引下げ」と言っています。
「成年年齢の引下げ」とは、民法という法律で“大人”として扱われる年齢が20歳から18歳に引き下げられる、ということです。
では、ここで登場する「民法」とは、どんな法律なのでしょうか。
民法という法律には、『財産に関するルール』と『家族に関するルール』が書かれています。
このうち、『財産に関するルール』は、主に、私たちが物を買ったり、借りたり、貸したり、お金を稼いだりするときのルールです。『家族に関するルール』は、主に、親子や夫婦の関係や、人が亡くなったときのルールです。
いずれも、私たちの日常生活で当たり前のようにやっていることや、接している人のことを定めています。つまり民法は、私たちの日常生活ととても関わりの深い法律なのです。
民法では、「成年」(“大人”)と「未成年」(“子ども”)は区別されています。
具体的には、未成年者は、他人と「契約」をするときは、基本的に親などの保護者の同意を得なければならず、もし未成年者が保護者に無断で「契約」をしていたときは、保護者がこれを取り消す(なかったことにする。)ことができるのです(未成年者自身も、取り消すことができます。)。
他方で、成年になれば、このようなルールはなく、自分の意思で自由に「契約」をすることができます。
私たちは、物を買ったり、借りたり、貸したり、働いてお金を稼いだりしながら生活しています。
このとき、例えば物を買うのであれば、その相手(売ってくれる人)との間で、何を買うのかや、いくらで買うのかを話し合って決めることになります。
働いてお金を稼ぐときも、相手(雇い主)との間で、何をして働くのかや、時給はいくらなのか、何時から何時まで働くのか、などを決めてから働きますよね。
このような取り決めを、「契約」といいます。
契約とは、お金や物のやりとりをする際の約束のことなのです。
そして、約束である以上は、いちど「契約」をしたら、基本的にはそれを守る義務があります。物を買う約束をしたらお金を払わなければなりませんし、働く約束をしたら、約束した日や時間に働かなければいけません(そのかわり、もちろん、雇い主は給料を払う義務があります。)。
もし約束が守られない場合には、裁判所に訴えて、強制的に約束を守らせるよう求めることもできると、民法では定められているのです。
「契約」は約束ですから、守る義務があります。つまり、「契約」をした人には、責任があるわけです(もちろん、相手に約束を守ってもらう権利もあります。)。
それだけの責任を負うわけですから、「契約」をする際には、その契約によって、自分がどのような責任を負うのか、そしてその責任を果たすことができるのか、よく考えてからしなければなりません。
例えば物を買うのなら、本当にお金を払えるのか、よく考えてから買わなければならないということです。
しかし、まだ年齢が若い人の場合、物事についてまだよく分からないことも多いですから、自分がどんな責任を負うのかや、それを果たすことができるのかについて、十分考えられないまま、「契約」をしてしまうことが考えられます。
また、若い人が「まだ分からないことが多い」ことを利用して、不当な契約をさせて利益を得ようと考える人もいます。
だから、一定の年齢を「成年」として、その年齢より若い人の契約については、親などの保護者や、未成年者自身が取り消すことができるようにしておき、若い人を守ろうというのが、法律の目的なのです。
成年になるということは、あなたが「契約」をしたいときに、もはや親などの保護者の同意を得る必要もなければ、あとから取り消されたりすることもない、ということです。
つまり、あなたは自分の意思で、自由に、他人と「契約」をすることできます。
欲しい物を自由に買うことができ、好きな仕事ができ、好きな場所に住み、もちろんクレジットカードだって自分の意思で作ることができるということです。
それはとても素晴らしいことで、みなさんにはこの自由と権利をぜひ行使して欲しいと思います。
しかし他方で、責任もあることを忘れないでください。あなたがした契約は、もう、あなたが若いという理由では、誰も取り消すことができないのです。
成年になるということは、そういうことです。
そうはいっても、実際、まだ皆さんには知らない・分からないことがたくさんあって、目の前の「契約」にはどんな「責任」があるのか、よく分からないこともあるでしょう。
あるいは、その場では契約してしまったけど、後から考えたら、したくない契約をさせられてしまったと思うこともあるでしょう。
そんなときは、一人で抱え込まずに、周囲の「大人」に相談しましょう。
そして、私たち弁護士は、そうした相談を受ける専門家です!
あなたの不安や困り事を解決するために、一緒に考え、力になります。
弁護士会の法律相談も、ぜひ利用してください!
<回答者>飯田 亮真 弁護士(大阪弁護士会 法教育委員会)
法律相談のご予約は・・・ 06-6364-1248
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