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コロナ禍で収入が減った場合、生活保護を利用することはできるの?

2021.10.19

私(30代)は、専業主婦の妻(30代)と子2人(3歳、1歳)の4人家族です。一応正社員の営業職として働いていますが、コロナ禍で歩合給や残業代が激減しました。貯蓄も尽きて、家賃や光熱費も滞納するようになってしまい、家賃保証会社から立ち退きを迫られています。
こういう場合、関係の悪い、親きょうだいに知られないように、生活保護を利用することはできるのでしょうか。また、他に使える制度はありますか。

1 生活保護制度とは

 生活保護制度は、憲法25条が保障する生存権を具体化し、すべての国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する大切な制度です。コロナ禍で生活に困窮する方が増える中、国も生活保護の利用を勧めていますので、積極的にその利用を検討しましょう。
生活保護を申請したい方へ (厚生労働省HP)

2 生活保護の利用要件

 あなたのように働いていても、世帯収入とすぐ換金できる預貯金等が、その世帯の「最低生活費」を下回っていれば生活保護を利用できる可能性が高いでしょう。
「最低生活費」は、地域、世帯構成、その年齢によって異なります。あなたの世帯(30代夫婦、3歳と1歳の子)が大阪市(1級地の1)である場合、生活扶助費(生活費部分)は約16万円、住宅扶助費(家賃部分)は5.2万円ですので、月収や預貯金額が約21.2万円を下回っていれば生活保護の利用要件を満たします。

3 親・きょうだいへの「扶養照会」を避けるには

 親族による扶養(仕送り等)を受けることは生活保護の利用要件ではありませんが、現実に仕送りがされれば、その分保護費が減額されます。そのため、生活保護の申請をすると、扶養義務者である親族(親・きょうだい等)に対し、仕送り等の援助ができないか文書照会(扶養照会といいます)がされています。本来、仕送りが期待できない親族に対しては扶養照会しなくてもよいこととなっているのですが、幅広く照会をかける役所が多いため、親族に生活保護利用を知られたくなくて申請をあきらめる人が多いのです。
しかし、2021年度から、申請者が扶養照会を拒んでいる場合には、その親族が「仕送りが期待できない者」にあたらないか、特に丁寧に聞き取りを行うよう、運用が改善されました。扶養照会をされたくない場合は、その親族からの「仕送りが期待できない具体的事情」を下記の申出書式に記入して保護申請時に提出すると良いでしょう。

生活保護問題対策全国会議 - 「扶養照会」をやめさせるためのチェック式の申出書式をつくりました! (fc2.com)

4 家賃滞納について

 1)転居したくない場合

 家主が賃借人を強制的に立ち退かせるためには、賃貸借契約を解除し、明渡訴訟を起こして判決を得た上で強制執行を申し立てなければなりません。そして、賃貸借契約を解除するためには、信頼関係を破壊するような重大な契約違反が必要であり(信頼関係破壊の法理)、法務省も、「新型コロナウイルス感染症の影響により3カ月程度の賃料不払が生じても」契約解除が認められないケースも多いと考えられるとしています。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた賃貸借契約の当事者の皆様へ

 2)転居したい場合

 現在の家賃が住宅扶助基準より高い場合や、「家主が相当の理由をもって立退きを要求」している場合には、住宅扶助基準の範囲内の物件に転居するための敷金等や引越し業者の費用を生活保護費として支給してもらうこともできます。

5 他に利用できる制度

 1)住居確保給付金(家賃支援制度)

 収入・資産が一定以下であれば、生活保護の住宅扶助費と同額の家賃の支給を受けられる可能性があります。これは、もともと「離職後2年以内」の離職者支援制度なのですが、コロナ禍で「収入減少」の場合でもよい等要件が緩和され、利用者が増えています。
厚生労働省|厚生労働省生活支援特設ホームページ | 住居確保給付金:制度概要 (mhlw.go.jp)

 2)緊急小口資金・総合支援資金(特例貸付)

 社会福祉協議会を窓口として、緊急小口資金(1回限り20万円)、総合支援資金(単身月15万円、複数世帯月20万円、原則3カ月)の貸付を受けられる特例貸付で、2021年11月末が申込期限とされており(2021年9月末現在)、コロナ禍で収入が減少した世帯にかなり積極的に貸し付けられています。住民税非課税世帯は償還が免除されますが、「貸付」であり返済が必要であることに留意する必要があります。
厚生労働省|厚生労働省生活支援特設ホームページ | 生活福祉資金:制度概要(緊急小口資金・総合支援資金) (mhlw.go.jp)

6 ひとりで抱え込まずに相談を

 コロナ禍の影響が広がる中で、生活が立ちいかない等、それぞれが抱える悩みへの対応策は様々です。ひとりで抱え込まずに、大阪弁護士の無料法律相談を、ぜひ、ご活用ください。
<回答者>
小久保 哲郎弁護士(大阪弁護士会 貧困・生活再建問題対策本部)

 

〇生活保護に関する法律相談の詳細は

 大阪弁護士会総合法律相談センター無料相談のご案内

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