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配偶者に知られずに、生活保護を受けたい…

2021.04.15

私は、夫からのDVで避難生活をしていますが、まだ、離婚出来ていません。パートで働きながら子どもを育てていたところ、コロナ禍のため勤務先のシフトが減らされて収入が激減し、生活が苦しくなってしまいました。夫のことが怖いので、住所等を知られたくありませんが、このような場合でも、生活保護を利用することが出来るでしょうか。

1 生活保護の申請は国民の権利です

2020年12月に、厚生労働省のウェブサイトに、「生活保護の申請は国民の権利です。生活保護を必要とする可能性はどなたにもあるものですので、ためらわずにご相談ください。」と掲示されました。国の機関が、生活保護の利用を積極的に呼び掛けるのは、初めてのことといわれています。<厚生労働省HP>
生活保護については、過剰なバッシングやネガティブなイメージから、申請をためらう方もおられるかもしれません。ですが、お金に困ることがあっても、必ず生きていける仕組みがあり、私たちはみな、その制度を利用する権利があるのです。

2 生活保護制度についての誤解

1)本当に必要!? 扶養義務者への照会
生活保護の申請時に、申請者にとって気にかかることの1つに、「扶養義務者に対する照会」があります。民法は、配偶者間と、直系血族間・きょうだい間の扶養義務を定めています。直系血族とは、祖父母・両親・子・孫等を指します。
福祉事務所は、生活保護の申請があった場合、扶養義務者による扶養は生活保護に優先するという前提で、扶養義務者に対して、扶養が可能かどうかという照会を行います。ですが、このような照会が、申請をためらわせ、申請者の自立を妨げるような場合には、照会を行わずに生活保護の決定を行うことが可能です。
例えば、ご質問のように、夫からのDV被害に遭って避難をしているような場合や、虐待や親族間のトラブル等で実家を離れているような場合には、照会を行うことで、申請者に危険が生じたり、無用の紛争に巻き込まれたりする恐れがありますから、照会を行うことは不適切です。
2021年4月には、厚生労働省の通知により、「扶養照会を拒否する者」の意向を尊重するという方向性と共に、扶養照会を行うのは「扶養が期待できる場合」のみに限る、ということがはっきり示されました(4月1日施行)。
また、実際には離れて生活している場合や、同じ家で暮らしていても生活費をもらえずに困窮しているような場合に、住民票上の世帯主の収入が高額等の事情があると、生活保護の利用が不可能だという誤解がありますが、そのようなことはありません。現実に扶養がなされていなければ、生活保護の対象になり得ます。

(2)住所が無くても・住所地にいなくても申請できます
生活保護については、住民票上の住所地、あるいは、定まった住所地でしか、申請ができないという誤解もありますが、そのようなことはありません。生活保護は、今いるその場所で申請することができます。申請は福祉事務所で行います(大阪市内では、「○○区保健福祉センター」という名称です)。
申請時に、「住民票上の住所地に戻って申請をするように。」、あるいは、「住所が決まったら、そこで申請するように。」といった指導がなされることがありますが、このような指導は誤りです。定まった住所がない場合に、施設入所を条件にすることも誤りです。
仕事を探して都市部に出てきたが仕事が見つからない、親戚や友人を頼って地元を離れたが支援を受けることができなかった、というような場合にも、その場所で、生活保護の申請をすることができます。

(3)資産についての誤解
生活保護の申請の際、自宅不動産や自家用車、自営業を営むための資産等は、原則として現金化することになりますが、手放さずに済む場合もあります。
売却によって相当の利益が見込まれるような場合や、維持費が高額な場合等には、資産を処分する必要がありますが、居住用の持ち家や、自営業にかかせない店舗等については、そのまま保有することが認められるケースがありますので、まずは、相談をしてみることが大切です。
また、公共交通機関の整備が不十分な地域や、障害や介護、自営や就労に必要な場合は、自家用車の保有が認められる場合もあります。
例えば、電車やバスが通っておらず、通勤に自家用車が不可欠な地域や、病院や介護施設等への通院の手段が自家用車しかない場合等には、自家用車がなくては生活を維持することができませんので、保有が認められる可能性があります。

3 女性への影響

コロナ禍では、特に非正規雇用の女性が、雇止めにあったり、就労時間を大幅に減らされたりといった影響を受けていることが、統計で明らかになっています。また、2019年と2020年を比較すると、女性の自殺者が、6091人から7025人へと、1000人近く増加しており、女性への打撃が大きいことが分かります(2021年3月15日付「コロナ下の女性への影響について」/内閣府男女参画局
女性や母子世帯の貧困については、これまでも相対的貧困率の高さが指摘されてきましたが、コロナ禍では、そのような状態がより一層顕著になっているといえます。
もちろん、どのような立場の人にもコロナ禍での悪影響は生じていますが、弱い立場の方が、さらなるしわ寄せを受けています。このような状況下では、生活保護の利用をためらう必要はありませんし、生活を立て直し、再スタートするために、積極的に生活保護が活用されるべきです。

4 生活保護の申請でお困りの場合は、弁護士にご相談を

生活保護は、最後のセーフティネットです。その役割は、いつ、どのような状況下でも果たされなければなりませんが、特に、誰も経験したことのないコロナ禍において、みなが、予想できなかった困難や、生活の激変にさらされている中では、その役割の重要性は高まっています。
生活保護申請の同行支援や審査請求についは、法テラスを通じて、弁護士費用の援助を受けられる場合もあります。
困難に直面しているのに、ご自身で窓口に行っても申請を受け付けてもらえない、というような場合には、あきらめずに、弁護士にご相談ください。

<回答者>
角崎 恭子 弁護士(大阪弁護士会 貧困・生活再建問題対策本部)

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