2020.10.28
住民投票とは、ある事項に関する住民の意思を、直接確認する制度です。わが国では、政治的事項を決定する際、基本的には、国民や住民を代表する議員が、国会や地方議会で審議し、決定しています。このように、国民や住民の代表者が国政を担当する制度を、代表民主制又は間接民主制といいますが、これに対し、住民投票は住民の意思を直接、投票などの方法により確認するものです。
このような住民投票の制度は、憲法95条をはじめとして、いくつかの法律や条例で定められていますが、住民投票によって確認された住民の意思に法的な拘束力があるか否かで、大きく2種類に分類することができます。
1つ目は、住民投票で確認された住民の意思、すなわち住民投票の結果に法的拘束力が定められているものです。例えば、日本国憲法95条は、一の地方公共団体のみに適用される特別法(地方自治特別法といいます。)については、「その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」としています。このような場合は、住民投票の結果によって地方自治特別法が制定できるかできないかが決定されることになり、住民投票の結果が法的拘束力を持つことになります。
これに対し、各自治体が、特定の課題についての住民の賛否を問うため、自ら住民投票条例を制定して、住民投票を実施している例があります。著名な例としては、原子力発電所建設をめぐって行われた新潟県巻町の住民投票、日米地位協定の見直し及び基地の整理縮小に関する沖縄県の住民投票などがあります。
これらの住民投票の結果には法的拘束力はないとされていますが、条例で、地方自治体の長などが、住民投票の結果を尊重しなければならない旨の条項を定めているものもあります。
現在、大阪府・大阪市で話題になっている「大阪都構想」についても同様に、住民投票の結果が法的拘束力を持つとされています。つまり、大阪都構想に関して今回実施される住民投票は、大都市地域における特別区の設置に関する法律7条1項に基づいて実施されるものですが、同法8条1項で、「有効投票の総数の過半数の賛成があったときは、共同して、総務大臣に対し、特別区の設置を申請することができる。」とされていて、住民投票の結果によって、特別区の設置申請ができるかできないかが決定されることになっています。
実際、2015年5月17日に行われた大阪都構想の住民投票では、反対が賛成をわずかに上回ったため、特別区の設置申請はできませんでした。
なお、住民投票の結果、大阪府に特別区が設置された場合、特別区に隣接する市町村については、住民投票を経ずに、当該市町村議会で特別区を設置することができるとされています(大都市地域における特別区の設置に関する法律13条2項)。
また、今回の大阪都構想に関して、特別区を設置することに関する住民投票が可決された場合であっても、法律上「都とみなす」とされているにとどまり、大阪府という名称までは変更されません(大都市地域における特別区の設置に関する法律10条)。そのため、大阪府の名称を変更する場合は、法整備が必要となります。仮にこの法律が大阪だけを適用地域とする地方自治特別法の場合、日本国憲法95条により、大阪府民を対象とする住民投票が実施されることになります。
<回答者>
大阪弁護士会 広報室
※ご相談は各地域の法律相談センターへ直接お問い合わせください。