交通事故に関するQ&A

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交通事故に関するQ&A

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1.賠償額の3つの基準

保険会社から示談案の提示を受けたのですが、弁護士が交渉すると賠償額が高くなると聞きました。どうしてそんなことが生じるのでしょうか。

保険会社は、相手方(被害者)に提示する損害額の算定にあたり、大きく分けて3つの基準を使い分けています。その3つの基準とは、裁判において認容されうる損害額算定基準(裁判基準)、自賠責保険の支払基準(自賠基準)、および、任意保険会社が独自に社内で定める任意保険の支払基準(任意基準)です。そのため、損害賠償の示談交渉にあたっては、保険会社がこの3つの基準を使い分けることによって、金額に差が生じることがあります。
自賠責保険の支払基準は、一律に定められており、その支払額には上限が設けられています。そのため、裁判において認容されうる賠償額に満たない場合が多くなります。
その不足部分を担保するための保険が、いわゆる任意保険です。対人賠償に限れば、賠償額が自賠責保険の限度額を超えた場合に、任意保険でカバーする仕組みとなっています。そのため、任意基準は、自賠基準(支払限度額を超える場合は、支払限度額)以上の金額で定められていますが、それでもその支払額は、裁判において認容されうる賠償額には満たない場合が多いです。

しかし、裁判所は、これら基準によることなく自由に損害賠償額を算定して基準額を超える支払を命じることができます。これを裁判基準又は弁護士基準といいます。
弁護士は、交渉が決裂した場合に裁判での請求も代理できます。そのため、保険会社は、交渉の段階であっても弁護士が受任したのであれば、裁判を念頭に入れ、裁判基準での交渉を行うことになります。結果、弁護士が交渉すると賠償額が高くなるという現象が生じるのです。

2.健康保険の使用

交通事故の被害に遭って治療を受けているが、健康保険を使った方がいいということを聞きました。どのような場合に健康保険を使うべきでしょうか。

交通事故による傷病の治療でも、健康保険を利用できます。
もっとも、あらゆる事案において健康保険を利用すべきというものではありません。例えば、任意保険に加入している加害者の一方的な過失により受傷したことが明らかな場合には、原則として加害者に治療費の負担を求めればよいので、健康保険を利用する必要はありません。しかし、加害者が自賠責保険にしか加入していなかったために支払能力に問題がある場合や、被害者の側の過失が大きいことから賠償額の減額の主張が加害者側からなされる可能性がある場合には、保険診療の方が被害者の最終的な受領金額が多くなる等のメリットがあります。したがって、このような場合には、保険診療を選択する方が無難です。

他方、保険診療では、「第三者行為による傷病届」を提出しなければならないなど、手続が煩雑な面があります。また、治療内容、使用できる薬剤の種類・量、リハビリの回数等に制約がありますので、健保利用ができない場合もあります。
具体的にどのような場合に健康保険を使うべきかについては、弁護士や医師とよく相談して決めてください。

3.労災保険

通勤中に交通事故の被害に遭いました。通勤中の交通事故にも労災保険が適用されると聞きましたが、交通事故の加害者への損害賠償とはどのような関係となるのでしょうか。

業務としての荷物配達中の事故(業務災害)や通勤途中の事故(通勤災害)などでは、労災保険から治療費や休業補償などを支払ってもらうことができます。労災保険は、加害者が保険に入っておらず治療費をもらえない場合や、被害者自身にも落ち度(過失)がある場合でも交通事故により生じたと認められる治療費を全額支払ってもらえるなどのメリットがあります。

ただし、労災保険から治療費や休業補償を支払ってもらった場合、重ねて加害者に治療費や休業補償を請求することは二重取りになるので認められません(但し、不足分があれば差額は請求できます。)。また、慰謝料は労災保険から支払ってもらうことができないため、加害者に請求するしかないなど、注意が必要なこともあります。

4.自賠責保険

交通事故の被害に遭いましたが、加害者が任意保険に入っていないことが分かりました。それでも自賠責保険から補償を受けることができると聞いたのですが、任意保険と何が違うのでしょうか。

自賠責保険は強制保険とも呼ばれるように、法律上契約が義務づけられている保険です。

そのため、加害者が任意保険に入っていないケースでも自賠責保険から治療費や慰謝料、休業損害などについて賠償金を支払ってもらうことができるという特徴があります。また、被害者に落ち度(過失)があっても過失相殺されることがない(但し、重大な過失がある場合には減額されます。)など、被害者の救済を重視した保険となっています。

他方で、自賠責保険はいわゆる人身損害のみを賠償するものであり、支払われる金額も法令で定められているため、必ずしも十分な賠償がなされるわけではない点は注意が必要です。たとえば、事故車両の修理代など物的損害については自賠責保険が支払われませんし、治療費や休業損害など一般の傷害に関する賠償は、加害車両1台あたり、被害者1名につき120万円が上限です。また、被害者が死亡した場合や後遺障害が残った場合の賠償額にも上限があります。
任意保険は自賠責保険ではカバーしきれない損害を填補するためのものですので、自賠責保険しか加入しておらず、これで賠償しきれない損害が生じたときは、加害者側に直接請求するしかありません。
また、自賠責保険を請求するためには、被害者が自分で診断書や休業損害証明書などの必要書類を取り寄せて請求書類を作成することが必要であるなど、被害者自身の手間がかかる点にも注意が必要です。

5.相手方が無保険の場合

交通事故に遭いけがをしましたが、加害者が自賠責保険にすら入っていないことが分かりました。治療費が相当かかっていますが、支払ってもらえるだけの財産が加害者にない場合、全く補償を受けることはできないのでしょうか。

相手方が賠償保険に入っていない場合でも、あなたが自動車保険に加入していれば、あなた自身の保険から治療費等の損害額について保険金を受け取ることができる場合があります。

また、あなたが自動車保険に入っていない場合や、あなた自身が運転していた自動車での事故でない場合であっても、あなたのご家族等が入っている任意保険から保険金が支払われる場合や、事故にあった自動車の所有者や運転者が加入している保険から保険金の支払を受けられる場合などもあります。次のような保険に入っていないか、保険契約の内容を確認してみてください。

(人身傷害補償保険)
あなたの自動車保険に人身傷害補償保険(特約)がついていれば、人身傷害補償保険から保険金を受け取ることができます。人身傷害補償保険とは、被害者自身が契約している保険会社からの保険金で損害を填補する保険です。この保険は被保険自動車に乗車している者全員に適用があります。その他にも、記名被保険者及び記名被保険者の配偶者やその子供の場合は、被保険自動車に搭乗中以外の自動車事故にも適用があります。事故にあったのがあなたの自動車ではない場合も、その自動車の所有者などに保険契約の内容を確認してください。

(無保険車傷害保険)
無保険車傷害保険がついている場合は、無保険車(相手方が自賠責保険に入っていない場合だけでなく、任意保険が付保されていても保険金額が損害額に満たない場合も含まれる。)との事故によって被保険者が死亡又は傷害・後遺障害を負った場合に保険金が支払われます。

(搭乗者傷害保険)
あなたが運転していた場合でなく、他人が運転していた自動車に同乗していたときの事故でも、搭乗者傷害保険がついていれば保険金が支払われる場合があります。搭乗者傷害保険とは、被保険自動車に生じた事故によって、被保険自動車に搭乗している者が身体に傷害を被った場合に支払われる保険です。搭乗者保険は実損の計算の必要がなく約款に従って保険金が支払われます。

(政府保障事業)
以上のような任意保険にも加入していない場合には、政府保障事業により最低限度の保障は受けることができます。
政府保障事業とは加害自動車が無保険である場合、加害自動車の保有者が明らかでない場合(ひき逃げなど)、加害車両が盗難車で保有者に管理責任がなく運行供用者としての責任が問えないために自賠責保険からの支払が受けられないなどの場合に、政府が損害の填補を行なう制度です。
政府保障事業では、支払額、支払基準、時効期間、物損や自損事故には填補されないことは自賠責保険と同じです。しかし、仮渡金の制度がない、健康保険や労災保険などの給付が優先し不足する部分についてのみ填補される、加害者側から受けた賠償額も控除される、加害者と被害者が同一生計に属する親族間事故の場合は原則として填補されない(賠償責任者死亡の事案で一定の要件を満たす場合には例外がある。)、共同不法行為の事案でも上限の保険金額は加害車両の台数に乗じない、事故及び填補すべき損害の金額確認に必要な期間経過まで遅滞の責任を負わない、といった違いがあります。
政府保障事業により保障の請求をする場合、請求の受付、支払などの業務は自賠責保険会社に委託されていますので、いずれかの委託先自賠責保険会社から申請書等を取り寄せて手続を行う必要があります。

6.保険会社の治療費打切り

追突されてむち打ちの治療を受けていましたが、交通事故から6か月経った時点で、加害者側の保険会社から「これ以上の治療費は支払わない」と言われました。まだ痛みが続いており、私としては治療を続けたいのですが、どう対処すればいいのでしょうか。

むち打ち(診断名としては、頚椎捻挫、外傷性頚部症候群、外傷性頭頚部症候群、頚椎症、外傷性頚椎捻挫、頚部挫傷等と書かれます。)は、交通事故から、6か月程度(事案等により数か月程度のこともあります)が経過すると、加害者側から治療の打ち切りを求められることがあります。しかし、現実問題として6か月を超えても治癒しないむち打ちも相当程度存在していますし、裁判において長期の治療が認められた例も多数あります。
そこで、まずは治療を受けている医師とよく相談し、治療の継続が必要かどうか診断してもらってください。医師から治療が必要であると診断された場合には、保険会社にその旨を説明し、治療の継続(治療費の支払い)を認めるよう求めてください。加害者側保険会社と支払の交渉をすることになりますので、事前に弁護士と相談することをお勧めします。

治療の継続が必要であるとの診断がされたにもかかわらず、保険会社がそれでも治療の継続を認めない場合は、自費で治療を受けて自賠責保険に対し被害者請求をする方法や、あなたが人身傷害補償保険に入っている場合には人身傷害補償保険から治療費分を支払ってもらうことも考えられます。ただし、自賠責保険では支払われる保険金額に120万円という上限があるため(傷害事案の交通事故の場合)、治療費以外の損害も含めて限度額を超えると保険金の支払を受けられないこと、自賠責保険や人身傷害補償保険でも治療の必要性がないとして支払を拒否される場合がありうることは注意してください。
保険会社が治療費の負担を拒否している場合に、自費で治療を続け、後で加害者側に損害賠償請求をする方法もあります(この場合には、健康保険を利用して、自己負担分を軽減することも検討してください。)。しかし、後日紛争になるリスクや、訴訟などで治療の必要性がないと判断されてしまうリスクもあります。いずれにしても、治療を継続するかどうかは弁護士と相談するなどして慎重に判断する必要があります。
あなたは現在も痛みが続いているということですが、これ以上治療を続けても効果がないと診断された場合(「症状固定」とされた場合)は、痛みが残存している状態が「後遺障害」にあたるとして、加害者に対する損害賠償請求(慰謝料、逸失利益など)をすることになります。症状固定とされた後に治療を受けた場合は、原則としてその治療費を損害として賠償請求することはできません。
症状固定については質問8、後遺障害についての損害賠償については質問9、10も参照してください。

7.同意書

交通事故の被害に遭って治療中ですが、加害者側の保険会社から「同意書」を提出するように言われました。この「同意書」とはどのようなものでしょうか。言われたとおりに提出してしまって不利にならないでしょうか。

同意書は、一般的に被害者が入通院した病院から診断書、診療報酬明細書、診療録やレントゲンなどの画像を、加害者の加入している任意保険会社が取得するために利用されます。これらの資料は、任意保険会社が保険金支払の前提として治療内容を確認したり、自賠責保険の請求手続のために自賠責保険会社に提出したりする必要があるのですが、同意書を提出すればこれらの資料を保険会社側が収集することができるようになり、迅速に治療費の支払いを受けられることにつながりますので、基本的には提出して問題はないでしょう。また、任意保険による保険金の支払いについても、保険会社としては治療内容を確認しないことには保険金の支払いができないといった事情も会社によってはありえます。早期に保険金を受取るためにも同意書を提出してもよいと思われます。
気になるようでしたら、弁護士に相談することや、同意書により取得した資料は全てその写しを送るよう要求することも考えられます。

8.症状固定

交通事故でけがをして治療中ですが、加害者側の保険会社の担当者が「症状固定」という言葉をよく使ってきます。「症状固定」とはどういう意味でしょうか。

症状固定とは、医師によるけがの治療の結果、これ以上治療をしても症状の改善が見込めない状態をいい、その症状固定の状態になった日を症状固定日といいます。症状固定の時点で、けがを原因とする何らかの症状が残っている場合、その症状は「後遺障害」となります。

賠償実務においては、症状固定日までが治療期間であり、症状固定日後は治療終了後の後遺障害という扱いになります。そのため、症状固定日は、(1)損害算定のための時的区分となる (負傷により働くことができなかった損害は、症状固定日以前については休業損害として、症状固定日以後については、原則として後遺障害による逸失利益として検討されることになります)、(2)いわゆる中間利息控除の起算点となる、(3)後遺障害による損害についての消滅時効期間の起算点となる、(4)症状固定後に支出した治療費は原則として損害として認められないことになるなど、損害賠償実務において、重要な意味を持っています。

なお、この症状固定の時期については、治療費の打ち切りにも関係することから、加害者の加入する保険会社と被害者側の間でよく争いとなります。納得がいかないようであれば弁護士に相談されることをお勧めします。

9.後遺障害

交通事故でけがをさせられましたが、完全に治らず後遺症が残るといわれました。この場合、相手方からはどんな賠償をしてもらえるのでしょうか。

被害者に後遺症が残ったことから生ずる損害としては、(1)「後遺障害慰謝料」と(2)「後遺障害による逸失利益」の2つがあります。したがって、この2つの損害に対する賠償を加害者より受けることになります。
上記2つの損害項目のうち、(1)「後遺障害慰謝料」とは後遺障害が残ったこと自体を理由とした精神的損害に対する慰謝料です。後遺障害慰謝料の額については、大阪地裁では、後遺障害等級(第1級~第14級)に応じて慰謝料の基準額(2800万円~110万円)が設けられています。なお、後遺障害等級第14級に至らない場合でも、その後遺障害の程度に応じて、数十万円程度の慰謝料が認められる場合もあります。次に、(2)「後遺障害による逸失利益」とは、被害者に後遺障害が残ったことで、被害者が得たであろう経済的利益を失ったこと(すなわち将来の収入減少)による損害です。
「後遺障害による逸失利益」については、問14を参照してください。
なお、重度後遺障害により将来にわたって介護が必要となる場合は、これらのほか、将来の介護費も請求できる場合があります。これについては問17を参照してください。

10.後遺障害等級認定・異議申立

後遺症が残ったので、加害者側の保険会社を通じて後遺障害の等級を認定してもらったが、等級が低いような気がします。後遺障害の等級はどのようにして認定されるのか、また、等級に不満があるときは、どのような手続を取ることができるのでしょうか。
  1. 後遺障害の認定機関
    後遺障害の等級を認定し、損害額を調査して自賠責保険金の金額を決定するのは、自賠責保険会社です。しかし、等級認定の基準が自賠責保険会社によってまちまちですと被害者の公平な救済の妨げとなるため、自賠責保険会社は、後遺障害等級認定の申請があった場合、損害保険料率算出機構の調査事務所に等級認定を依頼します。この調査事務所の等級認定及び損害の調査は、法律上、自賠責保険会社を拘束するものではありませんが、実務的には、自賠責保険会社が、調査事務所と異なる認定を認めたり、異なる損害を認定したりすることはありません。
  2. 自賠責保険に関する異議申立て
    後遺障害の認定などに不服があるときは、保険会社に対して異議申立てをすることができます。被害者請求(自賠法16条)の場合は、被害者が自賠責保険会社へ異議申立書を提出することになります。一方、一括払請求(事前認定)の場合には、被害者が任意保険会社へ異議申立書を提出し、任意保険会社が自賠責保険会社に再認定依頼をすることになります。
    このほかに、自賠責保険会社において妥当と考えられる後遺障害等級認定が受けられなかった場合など自賠責保険に関する紛争については、一般社団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が、当該紛争の調停(「紛争処理」といいます。)という審査手続きも行っていますので、こちらを利用することもできます。
    もっとも、異議申立てや紛争処理の審査結果にも不満がある場合には、訴訟を提起して後遺障害等級を争うことが考えられます。

11.休業損害(1)

交通事故でけがをさせられたので仕事を休まなければならなかったのですが、有給休暇を使ったので結果的に収入に影響はありませんでした。このような場合でも、休業損害を請求できるでしょうか。

交通事故の治療のために有給休暇を使用した場合には、これによる減収は生じていないため、休業損害が認められないようにも思えます。しかし、本来であれば他の目的に利用できたはずの有給休暇を、交通事故の治療のために使用しなければならなかったのですから、その結果、本来有給休暇が使用できたのに欠勤となる場合も十分あり得るし、失った余暇等のための時間は財産的価値を有するものといえます。
そのため、実務上は、治療のために有給休暇を利用した場合であっても、休業損害が請求できるものと解されています。

12.休業損害(2)

主婦が交通事故に遭い、治療期間中は家事ができなかった場合、休業損害を請求することができるでしょうか。

主婦のような家事従事者については、主婦として稼働できなかったとしても減収が生じていないため、休業損害は請求できないようにも思えます。
しかし、実務上は、家事従事者が家事労働に従事できなかった場合であっても、年齢、家族構成、身体状況、家事労働の内容等に照らし、相当額の休業損害を請求することが可能です。その金額は、女性の全年齢平均賃金を基礎として計算するのが原則です。

13.休業損害(3)

交通事故にあった時は失業中で就職活動をしていました。保険会社から、交通事故時に無職なので休業損害は補償されないと言われました。本当なのでしょうか。

休業損害とは、交通事故による休業のため現実に失った金額(得られたであろう収入のうち、交通事故により得られなかった収入も含まれる)が被害者の損害として認められるものです。したがって、交通事故の被害にあった時点で就労していなければ休業損害は発生していないことになり、原則として休業補償を請求することはできません。
しかしながら、交通事故時はたまたま失業期間中であったもののすぐに復職する予定であった場合など、無職者であっても、労働の能力及び意欲があり、就労の蓋然性が認められるような一定の場合には、休業損害が認められる場合もあります。

14.逸失利益

交通事故で後遺症が残り、それまでしていた仕事ができなくなって収入が大幅に減少してしまいました。このような場合、将来の収入の減少はどのような形で補償されるのでしょうか。

逸失利益として補償されます。
(理由)
逸失利益とは、交通事故の被害者が死亡したり、後遺障害を負ったりしたときに、その交通事故がなく、死亡や後遺障害がなければ被害者が将来得られたであろう利益をいいます。具体的な逸失利益の算出方法は、
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に応じた中間利息控除係数

という計算式を用います。基礎収入は、交通事故時の収入などを勘案して算出されます。労働能力喪失率は、原則、認定された後遺障害の等級によって区分されます。労働能力喪失期間は、原則として症状固定時の年齢に対応した就労可能な年数となります。中間利息控除係数とは、将来にわたる利益全部を現時点で一度に受け取ることにともない、受領した利益を将来運用することで得られる利息を控除するもので、一般的には、労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数という数値が用いられます。この係数を用いると、例えば10年間の労働能力喪失期間が認められる場合でも、これに対応するライプニッツ係数は7.722となりますので、実際に請求できるのは7.722年分ということになります。このように、逸失利益の計算には専門的な知識が必要となる場合もありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

15.入通院・傷害の慰謝料

交通事故でけがさせられて、入院や通院をしたときは、治療費などとは別に慰謝料がもらえると聞きました。どのような基準で慰謝料が支払われるのでしょうか。

交通事故に遭ってけがをし、入院や通院をせざるを得なかった場合には、けがをしたこと自体の苦痛の他、入通院による行動の自由が制約されることによる精神的苦痛が生じることから、加害者に対し、治療費や休業損害などの財産的損害の他に、精神的損害を賠償するための慰謝料を請求することができます。
その慰謝料は、原則として入院・通院の期間を基礎に、けがの程度(重傷か否か)に応じて算定されます。具体的な金額については、概ね基準が定められています。
もっとも、通院が長期にわたり、かつ、不規則な場合には、実際に通院した日数をも考慮して通院期間を計算することがある他、軽度の神経症状の場合には標準的な慰謝料額から3分の2程度減額するのが通常です。
また、仕事や家庭の都合等で本来より入院期間が短くなった場合や、通院治療であってもギプス固定により自宅安静をしていたり、入院の空室がなく待機を余儀なくされたような場合には、慰謝料の増額を要求できる場合がありますし、交通事故の加害者が悪質な場合にも、慰謝料の増額請求を検討すべき場合があります。
具体的にどの程度の金額の慰謝料が請求できるかについては、様々な個別要素を検討する必要もありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。

16.死亡の場合の損害賠償

交通事故で親族が亡くなりました。どのような基準で賠償がなされるのでしょうか。

交通事故により被害者が亡くなった場合、まずは亡くなった被害者本人に対する慰謝料が発生し、これを相続人が相続するものと理解されています。また、被害者の親、子、配偶者といった近親者には、肉親を亡くした苦痛が直接生じているものとして、近親者固有の慰謝料が発生するものと理解されています。
死亡慰謝料の算定は、被害者が「一家の支柱」の場合と、それ以外の場合で算定基準が分けられており、一家の支柱に該当すればより高額な慰謝料が認められる傾向にあります。一家の支柱とは、被害者の世帯が主として被害者の収入によって生計を維持している場合をいいます。もっとも、一家の支柱に該当しなくても、高齢な父母を扶養している独身者や、養育を必要とする子を持つ母などは、比較的高額な慰謝料が算定される傾向があります。
また、加害者に故意やこれに準じる悪質性(飲酒、無免許、信号無視、ひき逃げ、大幅な速度超過等)がある場合には、基準額を超えた慰謝料の増額がなされる場合もありますし、被害者が多数の場合や損害額の算定が不可能又は困難な損害の発生が認められる場合についても、慰謝料の増額がなされる場合があります。
さらに、被害者が亡くなった場合、これに伴う直接損害として葬儀費用等が、間接損害として逸失利益(生存していた場合に将来得られたであろう収入等)が損害として認められます。
慰謝料も含め、これらの損害の計算には専門的な知識が必要となりますので、具体的にどの程度の慰謝料の請求が可能であるかについては、弁護士に相談されることをお勧めします。 

17.将来の介護費用

交通事故で親族がけがをさせられ、家族などの介護がなければ生活できない状態となってしまいました。介護に必要な費用は相手方に請求できるのでしょうか。できるとすればどの程度の請求ができるのでしょうか。

交通事故により後遺障害が残存したことで、将来にわたって介護が必要となってしまったときは、将来の介護費用として加害者に損害賠償の請求をすることが考えられます。
その際の請求金額の基準としては、原則として、被害者の平均余命までの間、職業付添人の場合は必要かつ相当な実費を、近親者付添の場合は、常時介護が必要なときは1日につき概ね8,000円程度を、随時介護(入浴、食事、更衣、排泄、外出等の一部の行動について介護を要する状態)が必要なときは介護の必要性の程度・内容に応じて相当な額とされています。
身体的介護を要しない看視的付添(いわゆる見守り)を要する場合については、後遺障害の内容・程度、被害者本人の年齢、必要とされる看視の内容・程度等に応じて、請求することになります。
将来の介護費用については、高額賠償となるため争いになることが多く、具体的に介護内容・程度についての立証も必要であるため、具体的な請求に際しては弁護士に相談することをお勧めいたします。

18.物損・修理費

交通事故で自分の所有する自動車が壊れてしまい、相当高額な修理費が必要になってしまいましたが、相手方の保険会社から、「車両の時価を上回る修理費は出せない」と言われました。これはどういう意味でしょうか。

相手方の保険会社は、あなたの車両の修理費が車両時価を上回る「経済的全損」であるため、損害=車両時価額となるということを言いたいのでしょう。
まず、「修理ができるのになぜ『全損』?」と疑問に思われるかもしれません。
もともと、損害賠償は、被害者の経済状態を、被害を受ける前の状態に回復すること(「原状回復」と言います)を目的としています。
そのため、車両を修理することによって原状回復ができるのであれば、修理費相当額が損害とされます。しかし、修理費相当額が交通事故前の事故車の市場価格をはるかに超える場合には、「経済的全損」とされ、修理費相当額を請求することはできないと考えられています。

19.物損・評価損

交通事故で自分の所有する自動車が壊れされてしまいました。修理をしたものの、将来中古車として売却する際に、交通事故による修復歴ありということで査定に影響するようです。このような損害は賠償してもらえるのでしょうか。

修理をしてもなお機能に欠陥があるような場合には、実務上、評価損を賠償してもらえる場合があります。
評価損の発生の有無は、単に事故歴があるというだけでなく、車種、走行距離、損傷の内容・程度、修理の内容等を考慮して判断されます。
もっとも、評価損が認められやすい例としては、高級車で、かつ、初年度登録からの期間が短いものがあげられており、裁判などでも実際に評価損が認められるケースはそれほど多くないのが実情です。
評価損が肯定される場合は、修理費用の100~300%程度とされる例が多いと言われています。

20.物損・代車費用

交通事故で自分の所有する自動車が壊されてしまい、修理する間はレンタカーが必要となりましたが、後で相手方の保険会社に請求したところ、全額は出せないと言われました。レンタカーの費用はどの程度請求できるのでしょうか。

レンタカー(代車)を使用する必要性がある場合は、相当な修理期間を目安としてレンタカー代(代車費用)を請求することができます。全損の場合は、相当な買替期間が目安となります。
相当な修理期間は修理方法・内容により左右されますので一概には言えませんが、買替期間の目安が1か月程度とされることがありますので、それよりは短期間に限られるのが通常です。
また、修理内容等に関して相手方の加入する任意保険会社と交渉を要し、修理に着手するまでに長期間を費やすケースも想定されます。しかし、通常の交渉に要する合理的な期間であれば、その交渉期間についても代車費用の相当期間に含める例が多いものの、相手方任意保険会社との交渉がまとまらないことを理由にいつまでも代車費用が認められるわけではありませんので、注意が必要です。

21.物損・慰謝料

かわいがっていた犬が交通事故のために死んでしまって悲しみに暮れています。私としては子どもを亡くしたのに等しいショックを受けたのですが、相手方保険会社は、慰謝料を支払えないといっています。こんなバカなことはないと思うのですが、そうなのでしょうか。

残念ながら、ほとんどの場合、慰謝料は払ってもらえません。
交通事故の損害の賠償の場面では、ペットは物として扱われます。そして、物に対して発生した損害は、普通は物の値段を支払えば、持ち主の気持ちも癒されるのが通常であるため、慰謝料は、原則として、認められません。
しかし、持ち主の精神的苦痛が非常に強い場合など特段の事情がある場合には、ごく例外的に慰謝料が認められる場合もあります。この場合でも、その慰謝料額は数万円~数十万円にとどまる場合がほとんどです。

22.過失相殺

交通事故で保険会社の担当者から、「あなたにも落ち度があるから過失相殺する」と言われました。どのような意味ですか。

交通事故において、被害者にも、不注意があった場合、これを過失といい、この過失の程度だけ損害額から差し引いたうえで、裁判所が、被害者が加害者に対して求められる損害賠償の金額を定めることができます。この作業を過失相殺といいます。
具体的には個々のケースごとに被害者の過失相殺の率を具体的なパーセンテージで評価し、その分だけ損害の合計から差し引くわけです(たとえば、すべての損害額が1000万円で、過失相殺の率が20%なら、被害者が加害者に求められる損害賠償額は1000万円×(1-0.2)=800万円になります。)。
過失相殺の率については、過去の裁判例の蓄積などから、典型的な交通事故の場面については基準化が図られ、公平かつ迅速な交通事故事件の解決が図られています。それぞれのケースにおける過失相殺の割合や損害額をどのように計算するかについては、お近くの弁護士にご相談ください。

23.被害者側の過失

夫の運転する車に同乗中に交通事故に遭ってけがをしたので、相手方の保険会社と交渉中です。相手方の保険会社は、夫にも交通事故について過失があるので、「被害者側の過失」として私に対する賠償額を減額すると言っていますが、どういうことでしょうか。

民法722条2項は、不法行為(交通事故)による損害賠償の額を定めるにつき被害者の過失を考慮することができる旨定めています。この趣旨は、不法行為によって発生した損害を加害者と被害者との間において公平に分担させるという公平の理念に基づくものと考えられています。このため、被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなすとみられるような関係にある者の過失(被害者側の過失)を含むものと解釈されています。妻が夫の運転する自動車に同乗中に交通事故に遭ってけがをした場合、妻と夫は、身分上、生活関係上、一体をなすとみられるため、夫の過失は、被害者側の過失として、けがをした妻の賠償額を算定するにあたって考慮できることになります。

24.解決方法(交渉、ADR、訴訟)

交通事故の被害に遭い、相手方の保険会社と賠償の交渉をしていましたが、金額で折り合いがつきません。そんなときは裁判をするしかないと言われたのですが、そうなると費用も時間もかかるような気がするので今ひとつ踏み切ることができません。裁判以外の方法で解決する方法はないのですか。
  1. 交通事故損害賠償に関する保険会社との交渉で折り合えない場合、裁判以外でその紛争を解決する手段には、裁判所での民事調停や裁判所以外での各種ADR(裁判外紛争解決手続)があり、各種ADRには次のようなものがあります。
    ・ 公益財団法人日弁連交通事故相談センター(示談あっ旋手続・審査手続)
    ・ 公益財団法人交通事故紛争処理センター(和解あっ旋手続・審査手続)
    ・ 公益社団法人民間総合調停センター(和解あっせん手続・仲裁手続)
  2. 裁判所での民事調停では訴訟提起の半額程度の手数料等(裁判所への費用)がかかりますが、裁判所以外での各種ADRではそれらの手数料等が全くかからないものもあります。
    また、裁判所での民事調停では、相手方や保険会社との折り合いが最後まで付かない場合、手続を取ったこと自体が無駄になることもあります。これに対し、各種ADRでは、相手方の保険会社を事実上拘束する裁定等を下してもらえるものもあります。
  3. 他方、裁判所における民事調停では訴訟提起した場合と同様の裁判所を介した証拠収集手続を利用することが可能です。これに対し、各種ADRではそのような証拠収集手続きを利用することはできません。また、各種ADRの中には、治療の終了や相手方の保険会社の同意など一定の条件を満たしていなければ利用できない手続もあります。
  4. 裁判以外の方法で交通事故を解決する手段は各種ありますが、費用や保険会社への拘束力、手続を利用できる条件などを考慮しなければなりません。

25.消滅時効

交通事故の被害に遭ったのですが、相手方の保険会社と交渉するのが面倒くさく、しばらく放置していたら保険会社からも連絡がなくなりました。しかし、このまま放っておくと時効にかかって請求できなくなることもあると聞きましたので、少し不安です。交通事故の損害賠償は、何年で時効にかかるのでしょうか。
  1. 相手方の任意保険会社と交渉しているのであれば、その損害賠償請求権は3年で時効にかかるものと考えて構いません(民法724条、自賠法4条)。
  2. 「いつから」3年なのかについては、物件損害(※)に関する請求権は、交通事故の日からと考えてよいですが、人身損害に関する請求権は、交通事故の日よりも後の日から3年となることが通常です(後遺障害等級の認定を受けているのであれば症状固定日からとなり、そうでなくとも相手方やその保険会社から治療費などの支払を受けた最終日からとなります。)。
  3. 3年が経過する以前に時効中断の措置を講じれば、3年を経過した後も請求が可能となりますが、一般の方がご自身で時効期間を管理したり、時効中断の措置を講じたりすることは簡単ではありません。相手方との関係では時効期間は3年ですが、長期間の放置によって時効の心配が生じた場合には、一度法律相談等によって時効の完成時期や可能な中断措置などを検討されることをお勧めします。

※けがをしていた際に着用していた眼鏡は人身損害に関するものとして扱います。他方で、けがをしていた際に着用していた衣服は物件損害に関するものとして扱います。

26.弁護士費用、特約保険

交通事故の被害に遭い、相手方と交渉をしているのですが、専門的な知識を持っている保険会社相手の交渉に苦労しています。できれば弁護士に依頼したいのですが、請求する金額が少ないので弁護士に依頼するとそれだけで赤字になってしまいそうな気もします。弁護士に依頼するとしたら、いくらくらい費用がかかるのでしょうか。また、弁護士費用が支払われる保険があると聞きましたが、どのような場面で使えますでしょうか。
  1. 弁護士の費用について
    弁護士の費用は、一般的に、相談料、着手金、報酬金、手数料、日当等に分けられます。その他、裁判所へ納める費用等の実費もかかります。着手金、報酬金に代えて、時間制報酬(タイムチャージ)が決められる場合もあります。
    着手金・報酬金等の額は、経済的利益の大きさや、事案の難易、時間及び労力その他の事情等に照らして、弁護士と依頼者が委任の契約をする際に取り決めをします。
    相談料、着手金、報酬金、手数料、日当等は、各弁護士によって基準が異なりますので、まずは、ご相談や依頼を考えている弁護士に相談料や弁護士報酬等の費用をお問い合わせいただき、ご相談や依頼の契約をする前に、十分に確認するようにしてください。
  2. 弁護士費用保険について
    弁護士費用保険とは、保険契約者が交通事故等の被害に遭った場合に、弁護士費用や訴訟などの手続費用が保険金として支払われるという内容の保険です。自動車保険の特約であることが多いため「弁護士費用特約」と呼ばれることも多いですが、最近では弁護士費用保険単体で販売されるものもあります。
    弁護士費用保険は、保険の被保険者が交通事故に遭った場合に利用できるだけでなく、保険によっては偶然の交通事故に限らず利用できる場合もあります。車に乗っていたときに起こった交通事故のみならず、自転車同士の事故や、自転車と歩行者の事故にも利用できることが多いです。本件とは事案が異なりますが、交通事故以外にも、暴行による被害や盗難被害にも利用できるケースもあります。また、家族等一定の関係にある方が被害に遭ったときも、利用できることがあります。利用できる範囲は、各保険会社によって異なりますので、詳しくは保険会社の担当者に確認をしてください。 弁護士費用保険を利用できる場合、弁護士への初回の相談料から保険金として支払われますので、弁護士に相談する前に、保険会社の担当者に確認をしておくのがよいでしょう。
    担当する弁護士を指定しないのであれば、保険会社にその旨を伝えれば、保険会社等を通じて、日本弁護士連合会・各地の弁護士会が弁護士を紹介することになっている場合が多いです。
    また、弁護士を自分で選ぶこともできます。知人に紹介してもらった弁護士や、自分が相談に行った弁護士に、弁護士費用保険を利用したい旨を伝えてください。
    なお、ケースによっては、弁護士費用の額が弁護士費用保険で支払われる保険金の範囲を超えることがあります。その場合、自分で弁護士に直接費用を支払わねばならない部分が生じることもありえますので、事前に、弁護士によく確認をしてください。

27.弁護士と司法書士・行政書士との違い

交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すると高くつきそうなので、インターネットで交通事故を扱っていると宣伝している司法書士や行政書士に頼もうかと思っています。司法書士や行政書士に交通事故事件を依頼するのと、弁護士に依頼するのとでは違いがあるのでしょうか。
  1. インターネットで交通事故と検索すると、行政書士や司法書士のホームページが多数表示されます。とりわけ、行政書士のホームページは交通事故に関して詳しく記載されていたりして、誰に依頼すればいいのか悩むこともあると思います。
    しかし、弁護士、司法書士、行政書士はそれぞれの資格に基づいて仕事をしていて、資格にはできる仕事の範囲が決められています。
    弁護士の職務は、法律相談、交渉、書面作成、裁判等の法律事務全般です。弁護士でない人が法律事務を扱うと、法律上例外的に扱えることになっていない限り、刑罰に処せられる可能性があります。
    司法書士や行政書士は、法律上例外的に法律事務の一部を取り扱えることになっていますが、弁護士が取り扱える範囲からすればごく僅かです。
    皆様が必要としているのは、適正な損害賠償額にすることです。適正な損害賠償額にするためには、それができる資格を持つ専門家に依頼すべきで、資格の範囲を知ると、当然に弁護士に依頼すべきだということが分かります。

      弁護士 司法書士 行政書士
    法律相談 ×
    交渉 ×
    裁判(簡易裁判所) ×
    裁判(地方裁判所) × ×
    裁判(高等裁判所) × ×
    裁判(最高裁判所) × ×
    差押等の強制執行 × ×

    △・・・認定司法書士で、140万円以下の争いの場合にのみ可能

  2. 行政書士は何ができるか

    行政書士が、行政書士という資格においてできる行為は、行政書士法に定められている各種行為に限定されています。また、他の法律(弁護士法を含みます。)で制限される行為を行うことはできません。
    争いになっている案件を扱えるのは、弁護士法により弁護士のみとなっています(後で述べるように140万円以下の案件だと認定司法書士という例外があります。)。それだけでなく、最高裁(平成22年7月20日)は、「交渉において解決しなければならない法的紛議が生ずることがほぼ不可避である案件に係るもの」は、弁護士法により弁護士にしか扱えないとしています。ですから、将来的に争いが生じるであろう、案件についても、弁護士以外は扱えないということになります。
    このように、行政書士が扱える案件は、今現在争いになっていないだけでなく、将来的に争いが生じそうにないものに限定されます。そのうえで、行政書士が具体的に扱えるのはどのようなものでしょうか。
    まず、行政書士は代理や鑑定などの法律行為はできません。当事者の代理として行うことになる裁判や交渉はもちろんできません。法律相談もできません。
    では、行政書士の本来的な仕事である書類作成、書類作成相談について、どこまでできるのでしょうか。
    自賠責保険金の請求については、症状固定時期、休業損害の存否・程度、後遺障害該当性等が問題となることがあり、内容次第では、行政書士は取り扱えないことになります。
    後遺障害の異議申立については、明らかに法律上の専門知識に基づいて法律事務に関与するものであり、弁護士法に規定する鑑定にあたり、行政書士が関与することはできません。

    任意保険会社やその他に対する損害賠償請求については、慰謝料一つをとっても基準がさまざまですから、行政書士は取り扱えません。これと関連して、交通事故紛争処理センターに、事故当事者が、行政書士が作成した書面を持参することもありますが、行政書士が事故当事者の相談に応じて助言することは弁護士法違反です。
    以上のように、行政書士は非常に制限された範囲でしか関わることができません。
    交通事故の当事者となり、何か困ったことがあって行政書士の事務所に行っても、行政書士は、相談者とともに考えたり、相談者にとって良いと思われることを提案したりすることもできません(法律上認められていません。)。ですから、困ったことがあれば弁護士にご相談ください。

  3. 司法書士は何ができるか
    司法書士は、登記や供託手続をすること、法務局や裁判所等に提出する書類を作成することができ、これらに必要な限りで相談に応じることができます。
    認定司法書士になると、簡易裁判所における訴訟手続きの対象となる案件に関しては、法律相談、交渉、裁判ができます(あくまでも簡易裁判所の案件に限られますので、家庭裁判所の手続の対象になっている離婚・相続・遺産分割等は法律相談にのることもできません。)。
    ですから、認定司法書士であれば、交通事故案件のうち簡易裁判所における手続の対象となる140万円以下の案件については扱えることになります。
    しかし、簡易裁判所の案件であっても、訴訟を提起した後に、裁判所から地方裁判所に移送すると言われてしまうと、認定司法書士では扱えなくなってしまい、弁護士に依頼しなおす必要があります。また、簡易裁判所で勝訴しても、相手に控訴された場合は同様に認定司法書士では扱えず、弁護士に依頼しなおす必要があります。
    司法書士は登記手続の専門家で、もともと裁判や交渉の専門家ではありません。弁護士は法律の専門家として司法書士よりも知識や経験が豊富ですし、最初から弁護士に依頼しておく方がいいです。
  4. 費用・報酬の違い
    司法書士や行政書士のホームページ等を見ると、弁護士に依頼すると報酬が高いなどと書かれていることがありますけど、これは誤りです。
    弁護士の場合、法律相談・交渉・裁判等を全般的に扱い、争いを解決に導きます。
    これに対し、特に行政書士の場合、争いになっている案件を扱うことが出来ず、将来的にも争いになることがないような案件に関して、相談者・依頼者が言ったとおりの書類を作成することができるだけです。
    弁護士とは仕事の内容が全く違うので、費用・報酬が異なるのは仕方ありません。仮に、弁護士が、行政書士が取り扱える内容の仕事、行政書士と全く同じ仕事をした場合、弁護士の方が費用・報酬が安いことが多々あります。、、例えば、弁護士が簡易な自賠責保険金を請求する場合、手数料として、得た保険金の数パーセント(最低額数万円)程度ですることが多いようですが、行政書士の場合は10から20%といった高額の報酬ということもあるようです。なお、行政書士がかような成功報酬をとること自体権限外の行為を行っているとみなされる場合が多いと思います。
    また、相手に対する損害賠償請求を弁護士に依頼した場合、報酬は「相手から得た利益のうちの何%を報酬とする」いうようにして決めるのが一般的で、得た利益のほとんどが弁護士の報酬になってしまうようなことや、得た利益に関係なく多額の報酬をいただくようなことは一般的にありません。

28.刑事事件・行政上の制裁との違い

自分の不注意で人身事故を起こしてしまいました。被害者に賠償しなければならないのは当然のことですが、警察から呼出を受けて取り調べを受けることになりました。被害者への賠償と、警察での取り調べは何か関係があるのでしょうか。また、運転免許は影響を受けますでしょうか。
  1. 人身事故を起こしてしまった場合、加害者は、貴方が言うように被害者へ賠償する民事上の責任を問われる以外に、刑事上の責任や行政上の責任が問われます。
  2. 刑事上の責任
    (1) 交通事故を起こした加害者に対しては、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷行為処罰法、平成26年5月20日以降の事故に適用 )や道路交通法により、懲役刑・禁固刑・罰金刑が科される場合があります。
    刑事上の責任が科される前に、加害者は警察官や検察官から取調べを受け、供述調書や実況見分調書を作成されます。この間、加害者は逮捕勾留される場合とされない場合とがあります。その後、検察官が正式裁判を行うか、略式起訴をして罰金刑を科すか、起訴猶予や不起訴にするかを決めます。正式裁判になった場合は判決で実刑、執行猶予、無罪といった判断がなされます。
    (2) 自動車運転死傷行為処罰法は、刑法で定められていた自動車運転過失致死傷罪や危険運転致死傷罪を移行させるとともに、新たな類型の犯罪を設けたものです。
    危険運転致死傷罪は非常に重い刑(死亡は1年以上20年以下の懲役、負傷は15年以下の懲役)が科せられますが、要件が厳しくて適用される犯罪が限られていました。そのため、適用される類型を追加するなどして、悪質・危険な運転手に厳罰を科すようにしました。
    危険運転致死傷罪は、①飲酒等の影響で正常な運転が困難な状態で走行、②進行の制御が困難なほどの高速度で走行、③進行を制御する技能がないのに走行、④人や車への意図的な接近、割込みをし、危険な速度で運転、⑤赤信号を殊更無視し、危険な速度で運転、⑥通行禁止道路を危険な速度で走行した場合に適用されます。
    また、①アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転、②病気の影響で正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した場合には、新設された中間的な刑の危険運転致死傷罪(死亡は15年以下の懲役、負傷は12年以下の懲役)が適用されます。
    このような危険な運転でなければ、過失運転致死傷罪(7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)が適用されます。
    この他、飲酒や薬物使用の発覚を免れるような行為をした場合は、逃げ得を防ぐために新設された過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪(12年以下の懲役)が適用されるほか、無免許運転の場合には、これまで述べた刑がそれぞれ加重されます。
    (3) 刑事事件に対してはきちんとした法的知識をもって対応する必要がありますので、速やかに弁護士に相談することをお勧めいたします。
  3. 、行政上の責任
    (1) 交通事故を起こした場合には、刑事上の責任以外に、公安委員会が行う運転免許の効力の取消や停止等の処分を受ける場合があります。 なお、行政処分は、将来の道路交通上の危険を防止することを目的としているのに対し、刑事処分は過去の犯罪に対する制裁を目的としているので、本質的に異なる処分なので、それぞれの責任を負うことになるのです。
    (2) 免許の取消や停止は、過去3年間の運転免許の停止回数と累積点数に応じて、公安委員会が行ないます。個々の違反行為に付される基本的な点数(基礎点数)と、交通事故を起こしたときに基礎点数に付される点数(付加点数)とから判断します。
    警視庁のホームページに違反点数の一覧が掲載されていますので、そちらを参照してください。
    (3) 交通違反のうち、比較的軽微で定型的な違反については、違反者が一定の期日までに法律に定められた反則金を納付すれば、その違反について刑罰を科さないものとされています(交通反則通告制度)。
    警視庁のホームページに反則行為の種別及び反則金の一覧が掲載されていますので、そちらも参照してください。