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労働問題

労働にまつわる問題

労働問題に関しての相談例です。

懲戒解雇

私は、会社を経営していますが、今日、管理職会議があり、社員の一人が飲酒運転で人身事故を起こし逮捕され、現在、警察で取り調べを受けているとの報告がありました。
その社員は、勤務時間外に、友達の家に遊びに行った帰りに事故を起こしたそうで、その時に乗っていた車も個人所有の車で会社の責任という面では問題がないようなのですが、会議の中では、懲戒解雇にするべきだという意見が多数を占めました。
というのは、私たちの会社では、多くの社員が仕事で会社の車を使用していることから、飲酒運転で人身事故を起こすような社員を、このまま雇用し続けることは会社の信用に関わるからです。
就業規則には、懲戒事由として「不名誉な行為をして会社の体面を汚したとき」や「犯罪行為を犯したとき」が挙げられています。私自身、これからの会社のことを考えれば、懲戒解雇も致し方がないと考えているところです。
このまま、この社員を懲戒解雇にして問題はないでしょうか。

1.懲戒権は、企業が本来的に有する企業秩序維持権の1つですが、懲戒解雇を含め懲戒処分を行うには、就業規則にその旨の規定があり(懲戒の事由と手段が就業規則に明定され)、それが周知徹底されていることが前提となります。

2.もっとも、就業規則にその旨の規定がありさえすれば、いかなる場合でも社員を懲戒解雇にできるわけではありません。
ご質問の事案のような「私生活上の非行」に対する懲戒権の行使については、問題となった行為が「会社の社会的評価に重大な悪影響を及ぼすような」場合に限定されるからです。
そして、会社の社会的評価に重大な悪影響を及ぼしたかどうかは、「当該行為の性質、情状のほか、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情」から総合的に判断されます。

3.したがって、ご質問の事案においても、これらの諸事情から総合的に判断する必要があります。
 (1)まず、飲酒運転のうえ人身事故を起こしたということ(当該行為の性質、情状)が問題となります。
交通事故の場合、その悪質性が問題になると考えられますが、飲酒運転は社会的にも問題となっていますように情状に関する重要な考慮要素となるでしょう。
 (2)「事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針」については、多くの社員が車を使用していること以外詳細は分りませんが、運送業や旅客業のような会社の社員による交通事故ということであれば(会社の事業の種類・態様)、重要な考慮要素になると思われます。
また、会社との関係を含めて新聞報道されたといった事情や運送業や旅客業でなくても、交通安全に特に力を入れている、飲酒運転の追放について社会活動を行っている企業であるといった事情(経営方針)があれば、考慮要素の1つになるでしょう。
 (3)また、事故を起こした社員の「会社における地位・職種等」も問題となります。当該社員は単なる一般の従業員であったのか、それとも部下を持つなど指導的な立場であったのかなどが考慮されることになります。
 (4)さらに、就業規則の「懲戒事由」にあたるとしても、過去に社内で同様の事例があればその際の処分と均衡を失しないこと、諸般の事情から懲戒解雇が重過ぎないこと、本人の弁明の機会を与えたことなどの要件をクリアしないと懲戒権の濫用として無効となることがあります。

4.以上のように、私生活上の非行に対する懲戒権の行使については、非常に多くのことを考慮しなければならず、飲酒運転で人身事故を起こした者に対する懲戒解雇の有効性についても、その具体的事情の違いによって判断は分かれています。
したがいまして、本件においても、懲戒解雇が妥当かを検討するためには、まだまだ多くの事情を聞く必要があるといえますので、大阪弁護士会の相談窓口などで専門家に相談されたうえで、慎重な対応を取られることをお勧めします。

内定取消

私は、現在、大学の4回生で、地元では、そこそこ名の通った会社から内定も貰っていました。決して大企業ではありませんが、この就職難の時代ですし、会社の悪い噂もありませんでしたから、当然、4月からそこで頑張って働くつもりでいました。
ところが、先日、突然会社から電話がかかってきて、「内定を取り消したい。」と連絡が入り、頭が真っ白になってしまいました。
何度会社に電話をしても、ただ業績が悪化したからと繰り返すのみで、詳しい理由は教えてはもらえず納得がいかないのですが、裁判となると時間もかかり大変と聞いています。
私も次の就職先を探す必要がありますし、このまま泣き寝入りするしかないのでしょうか。
なにかいい方法があれば、教えてください。

1.そもそも「内定」によって、労働契約は成立しているのでしょうか。
「内定」には、口約束に留まるものから、内定通知が発せられるものまで、様々な形態がありますが、一般的には、内定通知を受け取ったり、誓約書を提出したりすることで、労働契約は成立していると考えることができます。
ただ、学校を卒業できない場合などには、当然に内定が取消される(労働契約が解約される)ことになりますから、解約権が留保された入社日を始期とする労働契約ということになります。

2.内定の取消しは、留保された解約権の行使ですが、だからといって、会社は、無制約に内定を取消すことができるわけではありません。
内定取消しの理由として認められるのは、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られます。

3.内定取消しの理由としては、具体的には、(1)予定の時期に卒業できなかった場合、(2)長期療養や逮捕・勾留のため、決められた期日に出勤することができなかった場合、(3)健康状態の悪化などによって職務遂行に必要な能力を欠くに至った場合、(4)重要な採用手続きを正当な理由なく履行しなかった場合、(5)経営上の必要性に基づく場合が挙げられます。
本件の場合は、内定取消しの理由が会社の業績が悪化したということですので、(5)経営上の必要性に基づく場合にあたりますが、経営上の必要性を理由とする場合、整理解雇の4要件を検討することが必要とされていますので、それについては、該当箇所を参考にしてください。

4.いずれにせよ、「内定」段階でも労働契約が成立していますので、会社の合理的理由のない一方的な取消しは許されないということになります。
したがいまして、内定が取消された場合、会社に説明を求め、合理的な理由がない場合には取消の撤回を求めることも可能でありますし、法律上、従業員の地位にあることの確認を求めたり、賃金の支払いを求めたりすることもできます。
その場合の方法としては、弁護士を通じての交渉から、調停や訴訟、労働審判手続きを利用する方法まで様々なものが考えられるところでありますが、それぞれに長所、短所があり、どの方法が相談者にとって一番いい方法なのかは事案によって変わってくるところであります。
したがいまして、今後どのように対応するのがよいかについて、まずは、法律の専門家である弁護士に十分に相談し、今後どのように対応するのがよいのか検討することをお勧めします。

5.なお、現在では、厚生労働省から「採用内定取消し問題への対応について」の指針が出され、内定取消しの対象となった新規学卒者に対して、その理由について十分な説明を行わなかったときや就職先の確保に向けた支援を行わなかったときには、厚生労働大臣は、採用内定取消しを行った企業名の公表ができることとなっています。 

整理解雇

私は、大学を卒業してから、ある会社に営業マンとして20年ほど勤めてきましたが、今月の初めに、突然、部長に呼び出され、「会社の経営が厳しいから、君は来月から来なくていい。退職金は会社の規程どおり支給するから。」と解雇通告書を渡され、リストラされることになってしまいました。
会社の経営状態が、いわゆるリーマン・ショック以降あまり良くないことは、知っていましたが、取締役らの報酬は上がっていると聞きましたし、今年も新入社員を複数名採用しています。また、私より営業成績の悪い社員はリストラされていません。
私は、数年前に、会社の経営陣に対し、残業代等の労働条件の改善を申し入れたことがあり、会社から嫌われていたかもしれませんが、長年、まじめに会社のために働いてきました。
このままでは、来月から路頭に迷うことになってしまいます。リストラにはどうしても納得がいきません。私はどうすればいいのでしょうか。

1.整理解雇の要件(要素)
本件のようなリストラは、「整理解雇」とよばれ、労働者に責めに帰すべき事由がないにもかかわらずなされるものです。
整理解雇が有効に認められるためには、これまでの裁判例では、(1)会社に人員削減の必要性があること、(2)会社が解雇回避努力をしていること、(3)その人を解雇することについて人選の合理性があること、(4)適正な手続きによって解雇がなされていること、という4要件を満たすことが必要とされたり、
こうした4つの要素が重視されたりしています。

2.(1)人員削減の必要性について
まず、(1)人員削減の必要性についてですが、裁判例では、企業の財政状況が赤字状態ならば、人員削減の必要性が認められる傾向があります。
本件では、会社の経営状態が正確には不明ですが、新規採用がなされていること、取締役の報酬増額等の事情が事実であれば、(1)の要件を満たさないと判断される可能性もあります。
裁判や労働審判になった場合には、会社の決算書の開示を求めるなどして、会社の経営状態を明らかにすることになります。

3.(2)解雇回避努力について
整理解雇は、従業員に責任のない事情によって従業員を解雇するのですから、会社は、整理解雇をできる限り回避するための努力をすることが必要となります。
例えば、解雇を回避するために、会社がとる措置として考えられるのは、退職金の上乗せを行って希望退職者を募集する、新規採用を控える、給料や賞与、役員報酬を減額するなどが考えられます。希望退職の募集はしばしばとられる措置ではありますが、従業員を希望退職へと誘導するだけの好条件であることまで求める裁判例もあります。
本件では、相談者の主張どおりの場合、会社の解雇回避努力は尽くされていないことになり、本件解雇が無効と判断されやすくなります。
もっとも、本件とは異なりますが、退職者や解雇者の再就職支援措置を行っていることを理由に、整理解雇を有効とした事案もありますので、整理解雇直前における会社の動向をより詳細に調査する必要があります。

4.(3)人選の合理性について
(3)人選の合理性とは、整理解雇の対象者をその人にすることについて、明確な基準があり、その基準が合理的に適用されているかどうかということです。例えば、一例としては、従業員のこれまでの勤務成績(欠勤日数、遅刻回数、規律違反歴など)や能力等が基準になりますが、これは、使用者の主観ではなく、客観的で合理的な基準によって決められていることが必要となります。他に客観的で合理的な基準として認められるものとしては、勤続年数、企業貢献度、年齢、経済的な打撃の低さ、転職の難易度などを考慮する裁判例があります。
本件で、相談者は、「自分より成績の悪い従業員はリストラされていない。」と述べていますが、勤務成績等について明確な基準があったのか、それが従業員に対して説明されており浸透していたのかなどの事情を把握し、客観的にも成績が劣っていない相談者が解雇されていた場合には、この要件を満たさない可能性が高くなります。また、相談者が会社の経営陣に対し文句を言ったことが、整理解雇の背後にある場合(上司から「そんなこと言ってるとやめてもらうぞ。」などと言われていたなどの事情がある場合)には、この要件を満たさないと判断されやすくなる傾向があります。

5.(4)手続の適正について
この要件は、整理解雇に至るまでに、会社が従業員に対し、どの程度の説明をしているか、いきなり整理解雇に踏み切るのではなく、まずは任意の退職を促すなどの措置をとったか、十分な説明を従業員に対し行ったかなどがポイントとなります。事前の説明では、現在の会社の経営状況や解雇回避措置の内容、解雇される者の選定基準、退職金の条件などについて、丁寧に説明がなされる必要があります。
解雇される者が組合員である場合には、組合員や組合に事前に説明をしたか、団体交渉に誠実に応じたかなどがポイントとなります。
本件のように、何らの説明もなく、会社では事前の希望退職者の募集もなされていないのであれば、手続きの適正を欠くと判断されやすくなります。

6.最後に
本件の相談者の主張がすべて事実であると認められれば、相談者の整理解雇は無効となる可能性が十分ありうるといえます。
整理解雇が認められるか否かについては、会社の経営問題とも関連し、難しい要素が多数含まれており、様々な事情を詳細に検討し、見通しを立てる必要があります。仮に解雇をされてしまっても、あきらめて泣き寝入りをするのではなく、ぜひ、お早めに弁護士にご相談ください。

雇止め

私の経営する製造業の会社では、リーマン・ショック以降、会社の業績が不振に陥りまして、当面回復の兆しも見えませんので、わずかばかりの内部留保を使い切る前に、人件費をカットするため、リストラによる人員整理をしたいと考えております。
従業員には、正社員と契約社員(期間工)がおります。契約社員については、契約期間や更新回数などは、契約社員によってまちまちです。これらの契約社員の全てについて、次回の契約更新時に、契約更新をしない(雇い止め)ということは可能でしょうか。
また、この際逆に、契約社員について雇い止めをするのではなく、契約社員より技術がおとり勤務態度にも問題もある特定の正社員を解雇することはできますか。

1.有期雇用契約の契約期間満了における雇止め(契約を更新しないこと)は、必ずしも企業が自由にできるわけではありません。
有期雇用契約が反復更新されて期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態にあった場合(東芝柳町工場事件-最高裁昭和49年7月22日第一小法廷判決・民集28巻5号927頁)や、雇用継続に対する労働者の期待に合理性がある場合(日立メディコ事件-最高裁昭和61年12月4日第一小法廷判決・判例時報1221号134頁)には、雇止めにつき、客観的かつ合理的な雇止めの理由が必要となります。
本件でも、契約社員が何度も契約を更新されていたり、契約更新の際に「次も必ず更新するから」と雇用継続を期待させるような言動があった場合には、雇止めが認められるためには、客観的かつ合理的な雇止め理由が必要とされる可能性が高くなります。

2.本件のような経営上の業績不振を理由とした雇止めに客観的かつ合理的な雇止め理由があるといえるでしょうか。
まず、こちらのとおり、業績不振を理由とした解雇(整理解雇)の場合(期間の定めのない契約、つまり正社員の場合)には、通常の解雇に比べて、人員削減を行う必要性が本当にあったかなど、4つの要件(要素)を慎重に吟味する必要があります(詳しくはこちらをお読みください)。
そして、この整理解雇の要件は、契約社員の雇止めの場合にも、正社員の場合に比べれば緩やかとは言えますが、一定の客観的かつ合理的な理由が必要となる場合があります。

3.ご相談の事例の場合には、雇い止めをする対象の各契約社員の契約年数や更新回数、業務の性質(一時的な業務か、継続的にある業務か)更新を期待するような事情があったかどうかなどをまず検討した上で、さらに、あなたの会社の業績からして本当に全員の雇い止めをしなければならないほど人員整理の必要性があるのか、会社の内部留保がどの程度あるのかなど、雇い止めをする必要性等について、慎重に判断する必要があります。
ぜひ行動を起こされる前に、弁護士に相談してください。

4.また、人員整理を行う際に、契約社員を雇い止めするのではなく、正社員を先に解雇することができるかという点ですが、この場合には、先に述べました整理解雇の4つの要件の他に、その正社員を先に解雇することについて、合理的な理由が必要となります。この合理的理由が特にない場合には、正社員を先に解雇することはできません。このように正社員の解雇の場合には雇い止めの場合に比べてより慎重な判断が必要になります。弁護士に相談されることをおすすめします。

普通解雇

いきなりクビと言われて会社をやめさせられることに到底納得がいきません。
私は、ある会社に半年前に入社し、営業部で勤務してきました。営業の仕事は、初めてでしたので、最初は戸惑うこともありましたが、最近はようやく仕事にも慣れてきたと思います。
先日、出社したところ、社長と営業部長に呼び出され、「お前は、3ヶ月連続して営業成績が営業部員のなかで最低だ。客からのクレームも何件か来ている。明日から来なくてよい。今日をもってクビだ」と言われました。
私としては、いきなりクビと言われて会社をやめさせられることに到底納得がいきません。私はクビになってしまうのでしょうか。

1.会社が解雇をするには、法律が定める解雇を制限するルールに従わなくてはなりません。
その中でも特に重要なルールは、解雇については、客観的かつ合理的理由があり、社会通念上相当でなければ、認められない(解雇は無効になる)というルールです。

2.本件では、あなたは、3ヶ月連続して営業部員のなかで成績が最低であるとのことですが、他の社員と比較して成績が悪いというだけではなく、成績の不良の程度が会社の業務遂行に支障を生じるなど、解雇しなければならないほど高く、かつ、会社において教育や指導をしても改善の見込みがない場合でなければ、解雇の客観的かつ合理的理由があり、社会的に相当であるとは認められないでしょう。
もっとも、あなたが、会社から高度な技術や能力を評価され特定のポストや職務についた、という場合は、解雇に客観的かつ合理的理由があり、解雇が社会通念上相当であるとされやすくなります。

3.解雇については他にも色々なルールがあります。あなたのように即日解雇といわれた場合には、会社は以後30日間分の平均賃金を支払わなくてはなりません。

4.解雇に客観的かつ合理的理由があるかどうか、解雇が社会通念上相当であるといえるかどうかは、個々のケースで判断され、「この場合はかならずこうなる」とはっきり言うことができません。会社から解雇するといわれたものの、解雇が有効かどうかに疑問がある場合には、弁護士にご相談ください。

私傷病休職と解雇

私の会社の営業部に、先月うつ病になっているとわかった従業員がいます。本人は、半年前に心療内科に通院を始め、その頃、うつ病と診断されたようですが、会社には黙ったまま勤務していたようです。先月、直属の上司の様子がおかしいと思い、問い詰めたところ、本人がうつ病で通院していると打ち明けました。最近は、特に具合が悪いようで、出社しても仕事にならないようなのです。
うつ病のため、出社しても仕事にならない日が続いているという状態なので、しばらく休職をさせて病気が回復するのを待とうと考えています。
しかし、一定期間を過ぎても回復しなければ、解雇するのもやむをえないと考えています。
会社として、休職や解雇といった措置をとることはできるでしょうか。できるとしてどのようなことに気を付けたらよいでしょうか。

1.私傷病休職とは、業務外の傷病による休職のことです。
会社が私傷病休職を命ずるには、原則として、就業規則にその旨を定めておく必要があります。就業規則を確認してください。
私傷病休職を命ずることができる規定がある場合には、どのような条件で休職命令ができる規定であるかも確認してください。

2.私傷病休職期間中に傷病から回復し就労可能となれば休職は終了し、復職となります。これに対し、回復せず私傷病休職期間満了となった場合については、就業規則でどのように定めているかによって決まります。回復せず私傷病休職期間満了となれば、「解雇する」と定める場合と、「自然に退職する」「自動退職」と定める場合とがあります。
解雇するという場合、従業員に対して解雇通知をするだけではなく、法律に定められている解雇を制限するルールに従う必要があります(参照)。
「自然に退職する」「自動退職」と定めている場合にも、会社から従業員に雇用契約が終了した旨を通知しておくべきです。

3.復職を認めるか否かについては、「治癒」したといえるかどうかの判断にかかってきます。「治癒」したといえるためには、原則として、従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復していることが必要です。
しかし、当初は軽易業務に就かせればほどなく通常業務へ復帰できるという回復ぶりである場合には、使用者がそのような配慮を行うことを義務づけられる場合もあるとした判決があります(東京地裁昭和59年1月27日判決、大阪地裁平成11年10月18日判決、大阪地裁平成20年1月25日判決参照)。
また、職種や業務内容を限定せずに雇用契約をしている場合には、休職前の業務ができなくても、その能力、経験、地位、使用者の規模や業種、その従業員の配置や移動の実情、難易等を考慮して、現実に配置可能な業務があればその業務に復帰させるべきだとした判決もあります(最高裁平成10年4月9日判決参照)。

4.以上から、裁判所の判断もはっきりしているとは言い難い状況であり、従業員に休職を命ずるか否か、復職させるか否かの判断は慎重にした方がよいと考えられます。また、私傷病休職期間満了を理由に従業員をやめさせるという対応をとる場合は、弁護士にご相談ください。
なお、以上はうつ病が業務以外の原因で発症した場合(私傷病の場合)を念頭において回答しております。

セクハラ(防止策)

(使用者側)事業主が講じるべきセクハラ防止策
私は、中小企業の管理職です。社内の女性社員から、セクハラの相談を受けました。
内容としては、同じ部署の男性上司から食事やデートの誘いを受け、何度かこれを断っていたところ、関係が悪化し、その後、その女性社員が取引先の支店長と不倫関係にあるとか、取引先の複数の男性と交際しているなどと、男女関係にまつわる根も葉もない噂を、社内や取引先に流されるようになったとのことです。そのため、女性社員は、職場環境が悪化して、仕事に支障を来し働きににくくなったとして、会社にその男性上司の言動を止めさせて欲しいと言っています。
このようなケースでも、会社として対応しなければいけないのでしょうか。

事業主は、職場におけるセクハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務があります(雇用機会均等法第11条)。そして、必要な措置の具体的な内容は、厚生労働省の定めるいわゆるセクハラ指針に定められています(平成18年厚生労働省告示第615号)。
セクハラ指針は、職場におけるセクハラ(セクシュアル・ハラスメント)につき、職場における性的な言動(性的関係の強要、腰、胸等に触る、等)に対する労働者の対応により当該労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受ける「対価型セクハラ」と、職場における性的な言動(当該労働者に関する性的な情報の流布、ヌードポスターの掲示、等)により労働者の就業環境が害される(苦痛、就業意欲の低下、仕事が手につかない、等)「環境型セクハラ」の2つに分類しています。
そして、事業主が採るべき措置義務の内容として、【1】就業規則への記載、各種広報・啓発資料等の配布、研修・講習等の実施によりセクハラに関する事業主の方針を明確化し、その周知・啓発をはかること、【2】相談・苦情のための窓口(担当者、手続き、等)を明確化し、それらに適切かつ柔軟に対応すること(人事部との連携、マニュアルの作成)、【3】職場におけるセクハラに係る相談の申出があった場合に、事案について事実関係を迅速・正確に確認し、雇用管理上(配置転換等)ないし就業規則上の措置をとるなど適正な対応をすること、【4】相談や事後対応におけるプライバシーの保護、相談や事実確認への協力を理由とする不利益取扱い禁止の周知・啓発、を定めています。
セクハラ指針に定める措置義務違反については、厚生労働大臣(都道府県労働局長)による行政指導や、企業名の公表制度の対象とされています。
さて、ご相談いただいた質問についてですが、女性社員の相談内容が事実であれば、男性上司の性的な言動により女性社員の就業環境が害されており、「環境型」セクハラの典型例に当たります。そこで、事業主としては、事案について事実関係を迅速・正確に確認した上で、雇用管理上(配置転換等)ないし就業規則上の措置をとるなど適正な対応をする義務があります(上記【3】)。
具体的には、相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認し、必要に応じて第三者からも聴取する等の措置を講じます。以上の調査の結果、職場におけるセクハラの事実が確認できた場合には、就業規則等にもとづき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講じなければいけません。また、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者との間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講じる義務があります。さらに、再発防止に向けた措置なども義務付けられています。
職場におけるセクハラが発生した場合、行為者の責任が問われるのみならず、事業主の責任をも追及されることが一般的です。事業主が責任追及を免れるためには、セクハラ被害が生じてしまった場合の事後の対応にとどまらず、セクハラ被害の予防のため、普段から弁護士等の専門家へ相談し、セクハラ指針に則った職場環境の整備を行っておくことが重要です。

セクハラ(職場環境)

(労働者側)セクハラ上司に対する対処方法
同じ部署の男性上司にセクハラを受けて困っています。
先日、社員旅行があったのですが、宴会の席で、その上司は私の隣の席に座り、私の手を触ったり、抱きついたりしてきました。また、他の女性従業員は、その上司から、「おれの膝の上に座れ」、「最近色っぽくなったな」、「胸のサイズはいくつだ」などと言われていました。そのような上司の言動に対し、場の雰囲気を壊してはいけないと思った私達は、その場では何も言うことができませんでしたが、その言動によって私達は大きな精神的苦痛を受けました。
そこで、私が女性社員を代表して他の上司に、社員旅行でのセクハラ被害を訴えたのですが、酒の席の上でのことだし、君たちだって受け入れていただろうと言って、取り合ってくれません。
社員旅行における男性上司の行為はセクハラだと思うのですが、どうすればいいのでしょうか。

男性社員の性的な言動により女性社員が苦痛を受けていることから、本件行為はセクハラに当たります。宴会の雰囲気を壊してはいけないという思いから、その場でセクハラ行為に抗議しなかったとしても、そのことのみをもってセクハラを受け入れていたということにはなりませんし、酒の席の上での行為だからセクハラに当たらないということにはなりません。そこで、女性社員に損害が生じていれば、加害者たる男性社員に対し、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を求めることができるのは当然です。
では、会社に対しては何も主張できないでしょうか。
雇用機会均等法は、事業主に対し、職場におけるセクハラを防止するために雇用管理上必要な措置を講じる義務を課しています。この内容を具体化したものが、厚生労働省の定めるいわゆるセクハラ指針です(平成18年厚生労働省告示第615号)。事業主の講じるべき義務内容についてはこちらの回答に譲りますが、職場におけるセクハラに係る相談の申出があった場合、事業主は、事実確認をしたり、事案によっては被害者と行為者を引き離すための配置転換や行為者の謝罪等の措置、さらには再発防止に向けた措置を講じる義務があります。
本件では、社員旅行中の宴会におけるセクハラが問題となっていますが、勤務時間外の「宴会」等であっても、職務との関連性、参加者、参加が強制的か任意か等を考慮して実質上職務の延長と考えられる場合には、「職場」におけるセクハラに当たり、事業主には同様の措置義務が課せられます。
そこで、事業主に対し、これらの措置義務を果たすよう働きかけることが考えられます。
さらに、会社に対して損害賠償を求めることも考えられます。
本件のように、セクハラ行為が、会社における上司としての地位を利用して行われた場合には、会社の職務と密接な関連性があるとして、会社に対し使用者としての責任(民法715条)を追及できることがあります。会社が、セクハラが起こるような職場環境を放置していたような場合には、働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務に違反したとして債務不履行責任(民法415条)を問う方法も考えられます。
一般的には以上のとおりですが、実際のセクハラ被害への対応方法については、セクハラ行為の内容やセクハラ行為が行われた状況、被害者とセクハラ行為者との関係(上司か、同僚か、等)、会社によるセクハラ防止策の有無・程度等の具体的事情により、千差万別です。そのため、万一セクハラ被害に遭ってしまった場合には、適切な解決方法を実現するためにも、早期に弁護士等の専門家に相談することが重要です。

セクハラ(損害賠償請求)

(労働者側)会社に対する損害賠償請求
私(X・女性)は1年ほど前に今の会社へ転職してきたのですが、他社で同種の業務経験があるということで部長に重用され、部長(A)と2人であるプロジェクトに取り組むことになりました。これに対し、課長(Y)は、自身のプライドを傷つけられたとして、社内で「Xは、社内の者や取引先の人と性的関係をもつ等をしており、会社の信用を失墜させる下品な女だ」という事実無根の噂を広めました。
その後、新しく赴任してきた部長(Z)に何らかの措置をとってくれるよう懇請しましたが、部長(Z)は、「課長(Y)のプライドを傷つけないように」と言うのみで何らの対策も講じてくれませんでした。
その結果、噂は社内中に広がり、他の職員は私を避けるような態度をとるようになったので、職場に居づらくなり、結局退職せざるを得なくなりました。
このような場合、誰に、どのような請求をすることができますか。教えて下さい。

  1. セクハラとは
    こちらの回答でも説明されているとおり、事業主は、職場におけるセクハラを防止するため、雇用管理上必要な措置を講じる義務があります。そして、職場におけるセクハラにつき、【1】「対価型セクハラ」(職場における性的な言動に対する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること)と【2】「環境型セクハラ」(性的な言動により女性労働者の就業環境が害されること)の2種類に分類されています。
    性的な言動には、当該労働者に関する性的な情報の流布も含まれますので、課長(Y)がXに関する性的な噂を流した結果Xが職場に居づらくなったことは、環境型セクハラにあたります。このような課長(Y)の噂を流す行為は名誉毀損にあたりますし、雇用契約に伴い使用者が負う義務としての、良好な職場環境を維持する義務(職場環境配慮ないし調整義務)にも違反する行為です。
  2. 法的にどのような請求が可能か
    (1)課長(Y)に対する請求
    まず、課長(Y)の性的言動がXの名誉を毀損するものであることを理由として損害賠償請求をすることができます。
    そのほか、課長(Y)の性的言動の継続性やXが職場に居づらくなり退社に至ったこと等から、精神的苦痛を受けた等を理由として損害賠償請求をすることも可能です。
    (2)部長(Z)に対する請求
    部長(Z)は、部下であるXが働きやすい職場環境を保つように適切に配慮・調整を行う注意義務(職場環境調整義務)を負っています。にもかかわらず、部長(Z)は、課長(Y)の性的言動を知りつつ何の対応もとっていないので、職場環境調整義務違反を理由とする損害賠償請求が可能です。
    (3)会社に対する請求
    課長(Y)の行為は、会社の信用に言及していることや、噂の相手方や発言の場などから見て職務に密接に関連する行為と考えられ、部長(Z)も部長として職場の管理をする職務を負い、(2)の義務違反は同人の職務に密接に関連していると評価できます。
    そこで、Xは、会社に対し、課長(Y)及び部長(Z)の不法行為に関する使用者責任に基づいて損害賠償請求をすることができます(民法715条)。
    (4)損害について
    それでは、課長(Y)、部長(Z)、会社に対し、具体的にはどのような損害を請求することができるのでしょうか。
    まず、Xは、職場に居づらくなり退職せざるを得ない状況に追い込まれたことにより精神的な苦痛を被っていることから、精神的損害として慰謝料を請求することができます。
    また、課長(Y)、部長(Z)、会社が職場環境調整義務を果たしていれば、Xは退職せずに働き続けることができていたと考えられます。その場合は、退職時から現在に至るまでの間、会社から賃金を得ることができたはずです。したがいまして、財産的損害として逸失利益(退職後から現在に至るまでの賃金相当額)を請求することができます。
  3. 最後に
    本件に関する回答は以上ですが、そもそも違法な侵害行為があったかどうかについては、加害行為の内容や態様など諸般の事情を考慮して社会通念上許容される限度を超えるものかどうかが判断基準となりますので、その判断については個々の具体的な事情によらざるを得ません。
    また、慰謝料等の損害額についても種々の事情を総合考慮して判断されるものです。
    したがいまして、個々の事例に則した適切な判断を仰ぐためにも、どのような法的請求が可能なのか弁護士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。

パワハラ(部下に対する指導)

(使用者側)部下に対する指導がパワハラに該当するかについての一般的基準
私は、会社でいわゆる管理職に就いている者です。
近年パワハラが社会問題化していることから、当社の管理職に就いている社員の間でも、部下に対する各人の指導がパワハラにあたるかどうかが話題に上ることがあり、部下に対して指導する際に過敏になっている者もおります。ただ、私個人としては、上司が部下にある程度の業務上の指導をすることは、当然許されて然るべきものと考えています。
そこで、いったいどの程度までの指導なら許され、どの程度からパワハラにあたるのかを教えて下さい。また、そもそも、パワハラにあたるかどうかについて、何らかの判断基準はありますか?

「パワハラ」とは、「パワーハラスメント」の略語であり、法令上にその定義はありませんが、一般的に「職権などのパワーを背景にして、本来の業務の範囲を超えて、継続的に人権と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く環境を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること」といわれています。そして、違法なパワハラと正当な業務命令を区別する基準については、「社会通念上許容される限度を逸脱し、相手方の人格権を侵害する違法性を有する行為といえるか否か」により判断されることとされています。ところが、現実には、部下への指導がパワハラに該当するかどうかは、会社の業務内容、個人の資質・性格等とも大きく関わるところであり、その判断は決して容易ではありません。
パワハラへの該当性については、上司による部下への指導の態様、程度、目的、注意・指導の場所・時刻等に照らして判断されます。部下への指導がパワハラにあたり、会社あるいは上司である従業員が損害賠償責任を負う場合について、過去の裁判例を参考とすれば、以下のような場面が考えられます。
まず、部下への叱責が、業務と関連性がない、単なる私的目的に基づくものである場合、これにより部下が精神疾患を患うなどの損害を負ったときには、その上司の行為は不法行為に該当し、損害賠償責任を負うものと考えられています。
次に、仕事に関する叱責目的であっても、その手段が不相当な場合が挙げられます。一般に、ミスを犯した部下に注意をすることは、それが真に業務改善を目的とするものであれば、社会通念に反しない限り一定程度は許されるものと考えられています。しかし、部下を管理監督する立場にあるものは、部下への指導にあたり、その人格権を侵害しないようにする注意義務を負うものとされています。部下の犯したミスの程度も考慮しつつ、部下への注意・叱責の度合いが社会通念に照らして許容されるものといえなければ、部下への指導がパワハラに該当すると認定されるおそれがあります。
この考え方からすれば、部下がミスを犯したことに対する制裁として、暴行を行うこと、私的に罰金を徴収すること、見せしめ的に懲罰を加え、明らかにそれが部下の名誉を棄損するような態様である場合などは、いくら業務上の指導目的だとしても、手段が不相当であるとしてパワハラにあたるといわざるを得ないでしょう。また、きわめて些細なミスに対し、必要以上に強く叱責をすることも、社会通念に反するものとしてパワハラにあたる場合があるものと思われます。
パワハラの該当性については、一般的には以上のように考えられています。ただし、一口にパワハラといってもその態様は千差万別であることから、現実に行われた行為がパワハラに該当するかどうかの判断は、事実関係を綿密に調査し、上司と被害者の言い分を精査した上で、個別具体的に判断せざるを得ません。また、パワハラを認定するためにどの程度の証拠が存在しているのかという問題もあります。そのため、万一、上司と部下との間で現実にトラブルが生じてしまった場合には、早期に弁護士等の専門家へ相談し、法的な観点から事実関係を調査した上、紛争の解決にあたることが、会社のコンプライアンスの観点からも重要であるといえます。

パワハラ(損害賠償請求)

(労働者側)パワハラへの対処及びパワハラを原因とする精神的疾患に対する補償
私は、入社3か月目の新入社員なのですが、上司によるパワハラがひどく、大変困っています。些細な仕事上のミスを原因に他の社員の前で怒鳴られたり、「頭が悪い」、「採用するんじゃなかった」、「給料泥棒」などといった人格否定的な発言をされることも日常茶飯事です。
そのため、精神的にまいってしまい、先日、病院へ行ったところ、うつ病であるとの診断を受け、しばらく会社を休職せざるを得ないことになりそうなのです。パワハラを行った上司を許すことはできませんし、休職中の賃金が支払われるのかについても不安に思っています。
この場合、会社またはパワハラを行った上司自身に対して何らかの補償を求めることはできないのでしょうか?

上司によるパワハラにより休職せざるを得なくなった場合、まず、会社に対して損害賠償請求を行うことが考えられます。会社は、その雇用する者の不法行為により被害者に損害が生じた場合、使用者責任(民法715条)を負うこととされています。また、会社には、雇用される者が安全に働けるように配慮する義務(安全配慮義務)があり、職場内でパワハラ被害が生じたということであれば、会社がこの安全配慮義務に違反したとして、債務不履行責任(民法415条)を問うことも可能です。
次に、パワハラを行った直接の上司に損害賠償を求めることも考えられます。その場合には、上司によるパワハラが不法行為にあたるとして不法行為責任(民法709条)を追求することとなります。
以上のような損害賠償請求を行う場合、その損害の内容としては、治療費、仕事ができないことにより被った経済的損害、精神的損害(慰謝料)が考えられます。かつては、パワハラに基づく損害賠償請求が裁判所で認容されたとしても、損害額としては低額な慰謝料しか認められないことが多いと言われていました。しかし、最近では、被害者がパワハラに起因して重度の精神疾患(PTSD等)を発症した場合、それにより将来の労働が困難になった分の逸失利益についても損害として認められる事例も現れています。
ここで、裁判所によりパワハラに基づく損害賠償が認められるためには、その証拠が存在することが必要となります。パワハラにあたる行為が存在していたことを証明する証拠としては、録音・ビデオテープ、パワハラの被害内容を記載したメモ・日記、パワハラの目撃者がいる場合にはその人の証言等が挙げられます。メモや日記に関しては、それが作成された時期(被害にあった際に逐一記載されていたものか、後から一括して記載されたものか)、客観的事実を詳細に記載しているかどうかなどにより、証拠としての価値が大きく異なってきますので、その作成方法には注意が必要です。パワハラにより被った損害額を証明する証拠としては、医師の診断書、給与明細、休職証明書等が挙げられます。
その他に、休職中の賃金の補償を求める手段としては、傷病手当や労災保険の支給が考えられます。これらの支給手続は、健康保険組合や労働基準監督署を通じて行うことになりますが、その手続に際しても、診断書等の疎明資料が必要とされます。
パワハラ被害への対応については、パワハラにあたる言動の内容とそれが生じた状況・頻度、会社側の上司の言動に対する対処、会社内での業務に関する指導研修体制等の具体的事情により、どのような解決が見込めるかが異なってきます。そのため、不幸にも現実にパワハラ被害に遭ってしまったときには、証拠の確保等を迅速に行い、適切な解決方法の見通しを立てるためにも、早期に弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

損害賠償請求との相殺

私の会社で配達を担当させていた従業員が、会社の軽トラックで配達中、サイドブレーキを引かずに坂道に停車したため、車から離れた間に車が動き出して川に落ち、車、商品が破損しました。
あまりに初歩的なミスなので、その従業員に弁償させたいのですが、お金がないと言います。そこで、その従業員に対する給料から天引きしたいのですが、問題ないでしょうか。

1 ご質問の中には、法律的な問題が2つ含まれています。すなわち、(1)業務中の事故で発生した損害を労働者に負担させることができるか、(2)損害の賠償金を、給料から天引きできるか、という問題であり、一概には回答できません。

2 まず(1)の問題ですが、例え労働者の過失により発生した損害であっても、常に労働者に対して全額賠償請求できるわけではありません。最高裁判例は、諸般の事情を考慮して、労働者に賠償請求できるかどうか及び請求できる割合を決定するとしています。具体的な裁判例では、労働者の過失の程度(不注意の程度)が軽い、当該労働者の勤務態度が悪くなかった、地位・給与が高くない、社員教育など会社側の事故防止措置が不十分、保険未加入、等の事情を考慮して、請求できる範囲を制限しています。また、労働者の過失が軽い場合には、請求は全くできなくなるとする裁判例もあります。この判断は個別具体的になされています。

3 請求できるとして、次に(2)の問題ですが、天引きは、法的には損害賠償債権と賃金債権の相殺になります。そして、労働者の同意を得ずに、賃金と他の債権を相殺することはできません。賃金は、現金で、全額、現実に、支払う必要があるからです。したがって、天引きをするには労働者の同意を得る必要があります。最高裁判例では、ただ合意があれば良いのではなく、労働者の本当に自由な意思に基づいて相殺の合意をしたことが必要とされており、裁判では自由な意思に基づく合意だったかが慎重に判断されます。

4 ご質問のケースでは、従業員の過失は重いと推測できそうですが、より具体的な事故原因や事故態様、上述した関連事情の有無を含めて、判断することになります。最終的に裁判で、何割まで賠償させることができると判断されるかは、法的評価の問題も含むため、予想することは難しいと言えます。賠償させうる範囲が制限されることも十分に考えられるので、労働者に全額賠償させてしまうと、後に裁判で返還を命じられることも考えられます。
次に、有効だと認められる相殺合意をなすには、従業員に、損害賠償義務の存在、額、根拠などについて十分な説明をし、相殺を納得させた上で、相殺合意をすることが必要でしょう。また、後日の証拠を残す意味で、十分な説明をした上で相殺に合意したことを書面に残す必要があります。

上記二点とも微妙な判断を含むことから、もし裁判になれば、天引きの全部または一部が無効とされるリスクがあります。安易に天引きをせず、予め弁護士に相談のうえ、対応することをお勧めします。

給与規定の切り下げ

我が社は従業員30名を抱える会社です。会社が2期続けて赤字になってしまいました。来期も好転は難しいと思います。経費削減も限界になってきているので、給与を下げて人件費を削減したいと考えています。就業規則(給与規定)を変更して労働基準監督署に届ければ給与の切り下げは可能でしょうか?

1 結論
まずは給料を切り下げる必要性を従業員に丁寧に説明して全員から同意を得る努力をするべきです。どうしても同意しない従業員がいる場合は、就業規則(給与規定)を変更して給与を切り下げるという方法もありますが、それが有効と認められるためには事前に様々な検討を行う必要があり、労働基準監督署に届ければ良いといった単純なものではありません。

2 従業員の同意
給料の切り下げについて従業員の同意を得る際には、後日同意の不存在や、同意の無効等について争われることを避ける必要があります。
会社の経営状況を説明する等して従業員に対して給料切り下げについての理解をきちんと得たうえで、従業員の自らの意思による同意を得るように配慮する必要があります。同意を得る際には、変更後の賃金等を明示した書面による同意をしておく方が賢明です。

3 就業規則の変更について
10人以上の従業員、すなわち労働者を使用する使用者ですので、個別に御社の従業員との間で給与を下げる合意をせずに給与規定を下げるためには、就業規則を変更する必要があります(労働基準法89条)。
就業規則を変更するためには、変更する就業規則を作成し労働基準監督署に届け出でなければなりません。また事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合の、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならず(労働基準法89条)、変更後の就業規則について労働者に掲示や書面等によって周知させなければなりません(労働基準法106条1項)。
就業規則の変更が合理的で、かつ変更後の就業規則が労働者に周知されている場合には、例外的に労働者との合意がなくても、就業規則変更によって労働条件を不利益に変更することができます(労働契約法10条)。
御社が就業規則を変更して給与規定を下げるということは、就業規則の変更によって労働条件を不利益に変更することになりますので、その変更には合理性がなければなりません。
御社は2期続けて赤字になっており来期も好転は難しそうだということですから、使用者側の必要性は一定程度あると思われます。しかし、給与を下げる程度やその相当性、代償措置や労働条件の改善を行ったのか、労働組合とどのような交渉をおこなったのか、他の労働組合や他の従業員にどのような対応をしたかどうかなどを総合的に考慮して合理性があるといえなければなりませんので、これらの点を明らかにするためにも、弁護士に相談されることをお勧めします。

定額残業代

私は、Aデパートの服飾店に勤務するX(32歳女性)です。
先月末から今月初めまで、勤務する服飾店では売り出しセールが開催され、その期間中は毎日のように残業がありました。残業時間も長く、一日平均3時間にも及び、売り出しセール期間中の残業時間の合計は30時間にも及びました。
そこで、勤務先に残業代の請求をしたいと思い勤務先会社に問い合わせたところ、「特別手当として2万円を支給しているから、残業代は特別手当のかたちですでに支払われています。」と言われました。
残業代を正規に計算すれば、少なくとも3万円は上回るはずですし、また、特別手当という支払い方は正当なやり方なのでしょうか。

1 結論
特別手当という支払い方は要件を満たしておれば合法ですが、その場合でも労基法に基づいて算定した残業代の方が多い場合には、差額を請求することは可能です。

2 Xさんの質問には二つの問題があります。
一つは、(1)「特別手当」というやり方が認められるのか、もう一つは、(2)仮に「特別手当」が認められるとしても、1万円以上の差額は請求できないのか、という問題です。
まず、(1)についてお答えしますと、このような「定額残業代」という制度については、条文上の規定はありませんが裁判例をみると、現実の時間外労働に対する労働基準法37条所定の割増賃金額以上の額が支払われていれば違法ではないとしています。そして、その前提として、同条所定の額が支払われているか否かを判断できるように、割増賃金部分が明確でなければならないとしています。
すなわち、「特別手当」という制度そのものは違法とまではいえないということかと思われます。ただし、支払い額が適正であることや、時間外労働手当が基本給などのほかの費目から明確に分離して計算できることが要件になるということです。
また、「特別手当」のような「定額残業代」の制度を運用するためには、勤務先会社の就業規則に時間外労働の割増賃金に代わる定額残業代の制度が採用されていることが記載されており、就業規則が周知されていることも、「特別手当」の正当性を根拠づける重要なポイントになるといえます。

まとめると、会社が「特別手当」の制度を正当な方法に従ってXさんを含む従業員に周知しており、給与明細をみると「特別手当」が基本給とは別に計上されており、特別手当の額が適正であるならば、「特別手当」は有効ということです。
次に、(2)についてお答えしますと、裁判例が、労働基準法37条所定の賃金額以上の額が支払われていることを「特別手当」の適法性の要件にしていることからもわかるように、当然に、労働基準法37条所定の計算方法から算出される額は請求できるということです。
つまり、Aさんが言うように、労働基準法に従った正当な計算方法によると、特別手当2万円を超える割増賃金が発生しているのであれば、その差額については請求することができます。
二つの問題については、これで回答となりますが、賃金の問題は、請求手続に問題があることや、「定額残業代」以外にも他の問題が隠れていたりすることもありますので、問題があると思った際には、弁護士に相談することをお勧めいたします。

残業代(休憩時間)

私は、事務職として会社に勤めています。
私の勤めている会社では、昼休みでも外出してはならないと言われており、従業員は皆社内で弁当を食べています。
昼休みは一応休憩ということになっていますが、電話応対や来客が非常に多く、ゆっくり休むということは全くできません。
この昼休みの時間について実際には休憩時間ではないということで、会社に昼休みの時間についての賃金を請求することはできないでしょうか。

1 休憩時間は、労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されることを保障される時間であり、労働基準法34条3項は、「休憩時間を自由に利用させなければならない」としています。
したがって、そもそも、外出が制限されるなど自由に休憩できない場合は、原則として、休憩時間とはいえません(ただし、合理的理由がある場合には利用方法の規制が可能な場合もあります。)。

2 そのため、休憩時間という名目であったとしても、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間は労働時間であり、この時間についても使用者は労働者に対して賃金を支払わなければなりません。
裁判例においても、労働者が実作業に従事していない時間であっても、使用者から場所的な拘束を受けたり、一定の事態が生じた場合に対応を義務づけられたりしている時間については労働時間とされることが多いです。もっとも、裁判例の中には、休憩中に多少の顧客応対をしていたとしても、労働時間だとは認めなかったものもあります。
あなたの場合は、昼休みに外出できないわけですから、場所的に拘束されていると考えられ、休憩中の電話の応対や来客が非常に多いということですので、昼休みの時間は労働時間に当てはまっている可能性があるものといえます。
昼休みの時間が労働時間にあてはまっているとしたら、あなたは昼休みの時間に相当する賃金を会社へ請求することができます。
そして、仮に昼休みの時間とその他の勤務時間を合わせた時間が1日8時間を超えていたり、1週間40時間を超えていた場合には、上記賃金の他に、割増賃金を請求することができます。なお、割増率については、1ヶ月について60時間を超えた場合には50%以上となりました(ただし、この割増率の増加については、資本金や労働者の数等で区分される中小事業主については現在その適用が猶予されています)。

残業代(管理監督者)

私は、大手飲食店チェーン店で店長として働いています。店長として年額500万円の賃金を受け取っていますが、店員のシフトが埋まらない部分を埋めなければならず、労働時間は、とても週40時間・1日8時間におさまりません。
しかし、会社からは、店長は管理職にあたるとの理由から、残業代は支払われていません。
会社に、残業代を請求することはできないのでしょうか。

1 結論 
店長であっても、管理職に該当しない場合もあり、残業代を請求できる可能性があります。

2 店長が管理監督者であるのかが問題です。
使用者は、労働者に対して、休息時間を除いて、週40時間・1日8時間を超えて労働させてはならず(労働基準法32条)、これを越えて労働させるときには、割増賃金(残業代)を支払わなければなりません。
しかし、これには例外があり、本件と関連するものでいうと、監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)については、労働基準法における労働時間に関する規定が適用されず(労働基準法41条2号)、週40時間・1日8時間を超える労働の場合にも、残業代を支払う必要はありません。
したがいまして、本件でいう大手飲食店チェーン店の店長が、管理監督者にあたらなければ、超過勤務分の残業代は請求できるということになりますし、管理監督者にあたれば、残業代は請求できないということになります。
管理監督者について、労働時間に関する規定が適用されないとされているのは、管理監督者が労働時間規制を越えて活動することが要請される重要な職責をもち、現実の勤務態様が労働時間規制になじまないからです。
そこで、ここでいう、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者をいうとされています。そして、その役職の名称にかかわらず、実態に即して、管理監督者にあたるかが判断されます。
したがいまして、店長という役職であるだけで、直ちに管理監督者であるということにはならず、職務権限の内容、出退社の自由度(管理を受けているか)、その地位にふさわしい処遇などの具体的事情を考慮して、管理監督者になるのかを判断することになります。
店員のシフトが埋まらないときには店長がシフトを埋めなければならないこととは、出退社の自由度が少なく管理監督者にはあたらない方向に働きそうですが、シフトが埋まっているときの勤務態様により判断は異なると思われます。また、店長として、経営や人事に関する権限が与えられているのか、会社の規模や職務内容からして年額500万円の賃金が管理監督者にふさわしい処遇であるか等によっても、管理監督者にあたるか否かの判断は異なると思われます。
このように、管理監督者であるかは、さまざまな事由を考慮して判断されるものですので、詳しい勤務条件や態様等の事情を示して、弁護士に相談されることをお勧めします。

競業避止義務違反による退職金不支給

私は、ある会社で外回りの営業をしていた者です。人間関係に不満があってその会社を退職したのですが、商品知識を活かそうと思い、1か月程度で同業他社に就職しました。退職金は退職から2ヶ月後に支給されることになっていたのですが、退職金規定に、同業他社に転職した場合は退職金が出ないという条項があったため、転職したことを会社から指摘されて、不支給だと言われました。退職金をもらうことはできないのでしょうか。

1 結論
事情によっては、退職金を請求できる可能性があります。

2 まず、退職金は、一般的に、在職中の功労に対する報償の性格があると考えられていますが、同時に、継続してきた労働の対価であり、賃金の一種であるとされています。既に働いた分への対価の意味がある以上、会社側が一方的に削減したり、不支給にすることはできません。退職金を不支給にするには、労働契約や就業規則上の根拠が必要となります。
ご質問では、退職金規定に条項があったということですので、就業規則上の根拠がある場合だと推測されます。もっとも、不支給条項が不合理であると裁判で判断されると、無効になる可能性もあります。無効になった場合、法律上の義務としては、退職金が全額支給されることになります。ただ、退職金の性格や、不支給条項の詳しい内容にもよりますが、ご質問を聞く限りでは、過去の裁判例から見て、不支給条項自体を無効にするのは難しいと思われます。

3 裁判例によれば、退職金不支給条項に文面上該当する場合であっても、常に退職金を不支給にすることが許されるわけではないとされています。従業員に労働の対償を失わせることが相当であると考えられるような会社に対する顕著な背信性がある場合、言い換えれば、従業員が会社に対し、退職金をもらえなくなっても仕方ないような重大な裏切り行為を働いた場合には、不支給条項が適用され、退職金請求権が失われると考えられます。具体例として、同じ部門の従業員多数を勧誘して一緒に転職し、その部門を麻痺させた場合や、前の会社に勤めていたことによって知った営業秘密を自己の利益のために利用して会社に重大な損害を与えた場合、などといった在職中の功労を抹消してしまう顕著な背信性が認められる場合等は、退職金不支給条項が適用されてもやむを得ないことがあると考えられています。また、背信性の程度によっては、減額のみが認められ、退職金の一部は請求できることもあります。

4 ご質問の限りでは、背信性の有無について判断できないので、転職後の事情の他、退職金の計算方法や、退職の経緯などを詳しくお聞きする必要がありますが、退職金を請求できる可能性もあります。弁護士に相談することをお勧めいたします。

休日労働・休日の振替

私が勤めている会社は、業務量が多い上、納期が非常に厳しいので、納期近くなると休日出勤をせざるをえません。
ある月、私も納期間近で休日出勤をしたので、休日手当が貰えると思っていましたが、支払われていませんでした。おかしいと思って上司に質問をしたところ、「うちの会社は、休日出勤をするには会社の事前承認がいる。就業規則にも書いてある。君は事前承認を受けずに働いたのだから、休日手当は支払われないが、今回は特別に代休を与える。」と言われてしまいました。
翌月、再び納期間近で休日出勤をせざるを得ない状況になったため、上司に休日出勤の事前承認を求めたところ、今度は、振替休日の指定をされました。確かに、私の会社の就業規則には、会社が振替休日をできる旨の規程がありますが、私は、働いた分の賃金が欲しいと思っています。
これらの場合であっても、私は休日手当を受け取ることはできますか。

1 これについては、3つの問題があります。すなわち、(1)事前承認がなければ休日出勤をしたとしても、休日手当は支払われないのか、(2)代休を与えれば休日手当を支払わなくてもいいのか、(3)会社の振替休日の指定に従わなければならないのか、という問題です。ただし、これらについては、一つの回答があるわけではなく、個々の具体的事情によって結論が変わりうることに注意する必要があります。

2 まず、(1)就業規則に定められている事前承認がなければ休日手当は一切支払われないのか、という問題についてです。
原則としては、就業規則上、事前承認のない限り時間外労働をしてはならない規程があったとしても、時間外休日労働の実績が現に存在し、会社がそれを黙認しているという実態があるならば、休日手当の支給が必要となります。もっとも、能力や仕事量の関係で本来休日出勤する必要がないにもかかわらず出勤をしたような場合には休日手当は支払われません。また、その程度が過度であった場合には、服務規程違反により処分される可能性もあるので、注意が必要です。
あなたの場合、業務量が多く、納期も厳しいので休日出勤をしなければ間に合わないということですので、休日手当の支払を求められる可能性も十分にあるかとは思いますが、その他の事情にも左右されますので、弁護士にご相談をされることをお勧めします。

3 次に、(2)代休を与えれば休日手当を支払わなくてもいいのか、という問題についてです。
「代休」とは、特定の日に労働義務を免除するというもの、すなわち、会社としては給料を支払う義務はあるが、労働者の労働義務は免除するという日のことを指します。そのため、会社は、「休日出勤をした」という事実に対して他の日に代休を与えたとしても、休日に労働させたという事実は変わりませんので、休日手当の支払が必要となります。
従って、会社が休日出勤に対して事後的に代休を与えた場合であっても、原則として会社は休日手当の支払を免れることはできません。もっとも、前述のように、休日出勤をする必要が本来ないにもかかわらず休日出勤をした場合には、休日手当の支給はされないので注意してください。
あなたの場合、代休を与えられた分ついては、休日手当の支給を求められる可能性がありますので、弁護士にご相談されることをお勧めします。

4 最後に、(3)振替休日の指定に従わなければならないのか、という問題についてです。
「振替休日」とは、法定または就業規則上の休日を他の日に振り替えることをいいます。この場合は、振り替えられた日が法定の休日となるので、元々休日であった日に労働したとしても、休日労働にはならず、休日手当の支給はなされません。
この振替休日は労働者の同意を要さずに行なわれるため、常に認められるわけではありません。労働者の同意なく振替休日が認められる要件としては、
(1)就業規則上、業務上必要があるときは休日を他の日に振り替えることがある旨の定め(振替休日を行う定め)があり、
(2)所定休日到来前に休日の振替を行うこと(具体的日時の変更まで示すことが必要)
の2つの要件を両方満たした場合に限られます。
もっとも、この場合であっても、使用者側の休日の振替方法に問題があった場合(使用者の指揮命令権の濫用と認められるような場合)、労働基準法35条2項の法定休日が確保されない場合(指定日に休日が3回以下しかないような振替)には、休日の振替は違法となります。
あなたの場合、就業規則上に振替休日ができる旨の規程があるようですので、休日の振替を必要とする合理的な理由がある場合には上記(1)の要件は満たしますが、(2)の要件や休日の振替方法に問題がある可能性があります。
そこで、これらの点を明らかにするためにも、弁護士に相談されることをお勧めします。
また、この問題については、休日の振替により、振り替えられた週の労働時間が所定労働時間を超える場合は、時間外手当の支給を別途請求することができますので、この点も併せてご相談されることをお勧めいたします。

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