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酔った上での約束の効力

2018.02.02

先月、友人2人と近くの居酒屋に飲みに行った時のことです。 友人の一人(A氏)が「80万円の新品のオートバイを購入するか迷っている」という話が出て盛り上がりました。 私はそこまでは覚えているのですが、すっかり酔っ払ってしまい、その後のことは全く思い出せません。 しかし翌日になってびっくりする事実を聞かされました。なんと、私が「古いオートバイは50万円で買い取るから、それを手付にして、君は新車を買えばいい」と言ったというのです。 A氏はそれを信じて、早速ディーラーに50万円の頭金を払ってきたところでした。私が「覚えていない」と反論すると、レシートの裏に私の拇印が押された契約書のような物も見せられました。 もう一人の友人も「はっきり喋っていたし、そんなに酔っているようには見えなかった」と言うのですが、私は本当に記憶がありません。50万円など、今の私はポンと出せるような状況にありませんし、どうしていいか困っています。 こんな場合、私はやはりA氏に50万円を支払わなければならないのでしょうか?酔った上での契約(契約書を含め)は有効なのか教えてください。
一、まず、昔の大人の世界では酒の席での話はたわいない話として、それを真に受ける人は居ませんでした。例えば、「お前と昨夜スナックで飲んでいて100万円貸したるというてメモに書いてくれたから、金貸してくれ」と友人に言ったとします。その友人は「お前アホか、そんなもんウソに決まってるやろ」と言われるのが落ちですし、また一夜明けてそんな無粋なことを言う人も居ませんでした。

ニ、しかし、世の中変わったもんですね。友人同志で酒を飲みに行った席でのことがこんな法律問題に発展するなんて。
とは言っても相談者としてはA氏に対してしっかりと態度表明しなければなりません。

三、酔った上での契約ということですが、まずどんな契約かを考えます。古いオートバイを50万円で買い取るからと言って、レシートの裏に私の拇印が押された契約書のようなものがあるということですが、書いてある内容は「50万円でAの古いオートバイを買い取る」ということでしょう。相談者の自筆であれば拇印つまり印鑑ではなく指印ということでも問題はありません。Aの署名があるのかないのか判りませんが、Aの署名が無いとしても、その場でAが「ありがとう」とでも言ったとすれば売買契約の形式は整ったということです。
次に、この売買契約の有効性について考えます。

まず、酔っていたかどうかという議論があります。

もちろん、酩酊状態であればものごとの判断ができない状態ですから、このことを意思能力が無いと言いまして、その時の契約は無効だということになります。しかし、それを立証することは困難です。もう一人の友人も酔っていなかったと言っているくらいですから。

そこで、次に考えられるのは、民法93条の心裡留保(シンリリュウホ)という規定の適用です。
簡単に言いますと、相談者がAの古いオートバイを50万円で買い取ると言ったのは相談者の本当の気持(意思)ではないし、そのことはAも知っている筈だし、知ることもできたという場合は、相談者が50万円で買うと言ったことは法的に何の意味もない無効なものだという規定があります。この条文を適用することが可能でしょう。

相談者が説明しているように50万円など今の私はポンと出せるような状況ではないと言うのですから、友人の古いオートバイを50万円で買うなどということは考えもしないことですから、レシートに書いたとしても本心ではないと思って書いていることになります。そして、こんな相談者の懐具合は友人なら知っているでしょうから、50万円で買うというのも本心から出たものでないことが分かる筈ですよということです。

四、要するに、相談者の直面している酔った上での契約はこの法律によって無効となります。
友人とオートバイの件を話合うならコーヒーでも飲みながらにして下さい。

五、さらに、もう一つの考え方があり得ますので参考にして下さい。
友人同志の酒の席での約束ですから、その場を盛り上げるために少し気持を緩めていたところがあったと思います。そんな状況での約束ごとについて、A氏が裁判所に相談者を訴えて判決をもらい強制執行までできるとするのは合理的でないと思われますので、A氏が訴えを起こしても裁判所はその権利を認めないという考え方があります。これを自然債務と呼んでいます。この場合は50万円を支払うのかどうかは相談者の自由に任せるということになります。

特殊な債務関係となりますので少し難しい問題だと思います。

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